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髙橋藍なぜ試合前に“ハグ”を? 仲間たちが「祐希さんに似てきた」と証言…サーブやレシーブだけじゃない21歳の“劇的な進化”のヒミツ
posted2023/06/20 11:04
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
AFLO SPORT
バレーボールネーションズリーグの名古屋ラウンド。試合開始のカウントダウンが始まるコートで、何気ない振る舞いがふと目に留まった。
日本代表主将の石川祐希が、いわば試合直前のルーティンのようにスターティングメンバーの6人、リベロを含めた7人の一人一人とハグをして回る。
その光景は見てきた。だが、これまでとひとつ違いがある。石川の後を追うように、髙橋藍も同じく一人一人とハグをして自らのポジションについたのだ。些細なことと思いつつ、その行動の意図を本人に問うと、照れ笑いを浮かべながらも真っすぐ前を見て、言った。
「イタリアでも気合を入れるために、チームメイトとハグしてお互いを鼓舞する。チームメイトとコミュニケーションを深めるだけでなく、試合に向けて気持ちを入れる。自分も経験してきたことなので、(日本代表でも)今回からルーティンとしてやり始めました」
おそらく東京五輪の直後ならば、こうも加えたかもしれない。
「祐希さんもやっていたので、僕も同じように」、と。
でも、今は違う。
「自分がチームの軸になって、チームを引っ張って勝利に導く、という思いが強いです。東京オリンピックの頃はまだまだ世界を知らない時期で、自分がどれだけできるのか不安もありました。実際に石川選手や西田(有志)選手に助けてもらってきましたが、次はそうじゃない。自分自身が周りから頼られる選手、勝ちをつかみ取れる選手にならなきゃいけない、と思いますね」
日本代表として国内で戦った国際試合は約1年ぶり。世界最高峰のイタリアで2シーズンを戦い抜いた自信を胸に、日の丸を背負い戦う髙橋の姿は、力強さと逞しさを増していた。
「代表、めっちゃ楽しみなんです」
5月10日に帰国した髙橋は、約2週間後に日本代表合宿へ合流した。わずかな休みの間もイベントや取材などハードスケジュールの日々が続いたが、新たな代表シーズンの始まりを心待ちにしていたのは髙橋自身でもあった。
2月にパドヴァを訪れた際、何度も同じ言葉を繰り返しながら、目を輝かせていた。
「今シーズンの代表、めっちゃ楽しみなんです。もちろん休みはほしいですけど(笑)、それぞれがレベルアップしてどんな風に戦えるんだろう、というのもあるし、僕自身もこれまで以上に“できる”と思っている。一番は、自信が違います」