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W杯ドイツ戦衝撃決勝ゴール、浅野拓磨のその後…ブンデス最終戦で“残留決定”の立役者に、地元ファンは「スピリットがすごい」、本人「危機感持ってやってます」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph bydpa/JIJI PRESS
posted2023/05/30 11:03
ワールドカップ、ドイツ戦での衝撃的な決勝弾から約半年、一躍ヒーローになった浅野はその後、どのようなシーズンを過ごしたのか
アサノは相手DFがまったく気を抜けない選手
ゴールという数字には表れていないが、その可能性を感じさせるプレーをしているからこそ、レッチェ監督も信頼してピッチに送る。守備の貢献が素晴らしいのはもちろんだが、守備だけよいから起用されているわけではない。
レッチェ「アサノは相手DFがまったく気を抜けない選手だと思っている。ちょっとでも目を離すと危険なポジションでボールを引き出してしまうんだ」
一瞬の動き出しでフリーになるし、そうした相手が嫌がる動きの連続は味方選手がプレーしやすい状況を作り出すことにもつながる。そもそも190cm強の選手がどのチームにもたくさんいるブンデスリーガでそもそも身長173cmの浅野がセットプレー時にゴール前への飛び込み要員になっていることがすごいことではないか。
課題ばっかり残ってるシーズンでもありますけど…
そして実際にチャンスに絡み、“最終決戦”となったレバークーゼン戦ではCKからのボールに対してスルスルとスペースへ入り込み、見事な右足ダイレクトボレーをゴールに突き刺した。先制ゴールをアシストしたクロスも素晴らしかった。右サイドから極めて精度の高いボールをゴール前へ送るとフィリップ・フェルスターがダイレクトボレーでゴール。
ヘルタ戦後に話してくれたことを思い出す。浅野は「結果という意味では決して満足できないですし、もっともっとチームを助けないといけないと思います」と厳しい表情で話しながら、でもそのあとすぐに「ただ……」と続けた。
浅野「課題ばっかり残ってるシーズンでもありますけど、自分はこのチームで成長はできてるかなと感じています。若いころの僕だとやっぱ点取れない度に焦ってしまったりとか、自分のプレーを見失うことはありましたね。そういうことがいまは基本的にないかなと思う。どういう状況でも、どんな試合でも、自分がやるべきことに100%集中してプレーする。それをシーズン通してできているかなと思います」
思い出すW杯という大一番での活躍
残留争いというのは神経戦だ。普段以上に気合いを入れて臨もうとすればするほど、普段以上に周囲の風景が視界に飛び込んでこなくなる。人は集中しようとすればするほど、視野はどんどん狭くなるものだ。集中をうまくコントロールできないと、どんなに優れたスキルを持った選手でも思いもよらぬミスを連発してしまう。
攻撃の糸口を作りにくいボーフムにおいて、浅野にボールが入った時に攻撃のスイッチが入る頻度が高いというのは確かにあったのだ。最終節のレバークーゼン戦でそれまでの取り組みが最高の形で実を結んだと言えるのではないだろうか。