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W杯ドイツ戦衝撃決勝ゴール、浅野拓磨のその後…ブンデス最終戦で“残留決定”の立役者に、地元ファンは「スピリットがすごい」、本人「危機感持ってやってます」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph bydpa/JIJI PRESS
posted2023/05/30 11:03
ワールドカップ、ドイツ戦での衝撃的な決勝弾から約半年、一躍ヒーローになった浅野はその後、どのようなシーズンを過ごしたのか
そんなチームを支えていたのは熱狂的なファンだ。ヘルタ戦でも7万人強の観客でベルリンのオリンピアシュタディオンが埋め尽くされたのだが、うち1万5000人以上がボーフムから駆けつけたファンたちだった。そしてそんなファンの多くが愛していたのが浅野なのだ。
ゴールは少ない。アシストも少ない。正直とても少ない。33節終了時で2得点1アシストというのはFWとして満足できる数字ではない。それでもボーフムのホームスタジアムに行くと、周囲から浅野への称賛の声援をよく耳にする。ファンは見ている。
「チームのために何度でもダッシュで走ってくれる」
「ボールを引き出して、はたいて、スペースに飛び出して、ゴール前に飛び込んで」
「立ち止まることが全くない。いつも全力だ。あのスピリットがすごいじゃないか」
「あんだけでかいDFにぶつかられても倒れなくて、すり抜けて運んでしまう」
ボーフムはチャンスメイクがうまいクラブではない。長身CFフィリップ・ホフマンにロングボールを当てるか、スピードのある浅野とクリストファー・アンティ=アジェイを走らせる頻度がとにかく高い。せっかく走ってもボールが来なかったり、来ても処理の難しいボールだったり。でも浅野は文句も言わずに何度でも走り、何度でも戦っている。たとえ100回走っていい形でパスが来なくても101回目のためにまた走る選手だ。
僕は本当に求められていることを全力でやるしかない
浅野「監督も含めてチーム全体が今やろうとしてることがこれしかない。この戦い方で結果を出すのは難しいし、いち選手としてもっとやりたいなっていう意欲はありますけど、今のチーム状況がそうなので僕は本当に求められていることを全力でやるしかない」
無得点に終わった5月20日のヘルタ戦で浅野はチームのチャンスの多くに絡んでいる。セットプレーからヘディングで流されたボールにヘディングシュートで合わせたり、スルーパスで抜け出して左足シュートを放ったり、センタリングをヘディングで流して味方のビッグチャンスを演出したり。それらがGKやDFのファインセーブに阻止されたり……味方のシュートが枠内をとらえきれずで得点やアシストにはなっていないが、本当にあとちょっとのところだったのだ。