箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根優勝&監督勇退の駒澤大は今、どうなっている?→スローガンに「3冠」の文字なし…藤田敦史新監督が明かす、その理由
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph bySankei Shimbun
posted2023/05/18 11:12
3月の3冠達成報告会であいさつをする大八木弘明総監督と新しく監督となった藤田敦史。今季の始動レースから好調なチームを率いる新監督に感触をたずねた
「駅伝メンバーには入れる子もいれば、入れない子もいます。佐藤圭汰は世界を目指して練習をしていますが、まだ結果が出ていない選手が世界といったところで夢物語でしかない。目標はあくまでも人それぞれで、自分が1日1日成長していくことが大事。そのために目標をどこに置くのか。それを選手と話し合いながら設定します。そうすると意識も取り組みもさらに変わってきます」
当たり前だが能力には個人差がある。駒澤大は、数年前から全体の力を上げていく「全体主義」から「個人主義」に転換し、個別に目標を設定することで成長率が上がった。
では、声掛けが重要とは、どういうことなのだろうか。
「上のレベルの選手だけに声掛けするのではなく、下の選手も見て、『この間よりもここがよくなったね』とか声をかけてあげることが重要です。選手ひとりひとりにそれぞれ声をかけるのはめちゃくちゃ大変です。でも、声掛けすることで見てくれているんだなっていうのを感じてくれると思いますし、実際、声掛けすると目の色を変えて一生懸命にやってくれる。こういう選手とのコミュニケーションはすごく大事ですね」
大八木監督から学んだこと
個別のコミュニケーションを大事にし、モチベーションを維持させるのは、コーチ時代に大八木弘明総監督から学んだことだった。コーチとして入閣した当時、大八木監督は、管理主義的なやや上からの指導が主だった。だが、それだけでは結果が出ず、藤田監督もコーチ時代に悩んだ。
「どうしたらいいのかって悩んでいた時、大八木が自ら目線を下げて、いろんな子に声掛けしたんです。それから選手が変わりましたね。大八木が変わり、選手も変わった瞬間を目の当たりにして、今の子を指導するには、そういうスタイルがいいんだと理解しました。それは大八木から学んだことです」
チーム作りや選手指導は大八木スタイルを継承していくことになる。成功しているやり方をあえて変化させる必要はなく、「勝っているチームはいじらない」という格言もある。とはいえ、チーム作りにおいて田澤という大エース、山野という安定感抜群の選手が抜けた影響は大きい。大八木総監督も「強いチームにはエースが必要」と常々言っていたが、藤田監督はエースについて、どう考えているのだろうか。
藤田監督のエース論
「田澤のような大エースと比較すると、(鈴木)芽吹、篠原は、近いところまで来ていますが、まだ精神的な支柱というところまで至っていない。たぶん、彼らもそのことを理解しているところがあって、だから芽吹は自分だけじゃなくて4年生全体でチームを作って行こうとしています。田澤がいない分、自分たちの代でしっかりやっていこう、そういう覚悟が見えるので、逆にそういう時の方がチーム全体としては一体感が増して強くなるのかなと思いますね」