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「羽生善治名人相手に奪取した姿に…」伸び悩んでいた中村太地28歳が震えた“佐藤天彦名人誕生”「1年半後、私も羽生先生から」 

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中村太地

中村太地Taichi Nakamura

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posted2023/04/27 11:04

「羽生善治名人相手に奪取した姿に…」伸び悩んでいた中村太地28歳が震えた“佐藤天彦名人誕生”「1年半後、私も羽生先生から」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

22年、年末の棋王戦挑戦者決定戦で藤井聡太五冠(当時)と対局する佐藤天彦九段。彼の「名人位獲得」は中村太地八段に大きな刺激となったそうだ

 実際、1年半後(2017年)の王座戦で当時5連覇中だった羽生王座相手に、3勝1敗で初めてとなるタイトル獲得を果たすことができました。私を含めて当時若手だった棋士は「羽生九段からタイトルを獲るためにどう勝ちを手繰り寄せるか」というのが命題でした。それを先んじて示してくれたという意味で「佐藤天彦名人誕生」は私にとってもまた、ターニングポイントでした。

 ちなみに天彦九段、今期の名人戦第1局の大盤解説が絶品だったそうですね(笑)。色々なことを深く考え、それをオリジナリティある言葉のチョイスで言語化する。そういう意味でも将棋界にはなくてはならない棋士だなと実感します。

棋戦が増えることは、いち棋士としては大歓迎なんです

 私もこれまで副立会人や大盤解説という立場で名人戦に関わらせてもらいましたし、修行時代には「羽生善治-森内俊之」のゴールデンカードをテレビ中継で食い入るように見た記憶があります。そして今期から、私は順位戦A級に昇級しました。在籍する棋士の誰もが強いと認識した上で――名人戦に挑める資格がある喜びを胸に戦いたいと思っています。

 名人戦のような格式と伝統あるタイトル戦の一方で、藤井叡王が並行して防衛に挑んでいる叡王戦は、八大タイトルの中で最も新しいものです(今期で第8期)。様々な企業のバックアップによって新たな棋戦が増えることは、将棋界の発展のために……「大」の文字を何個も並べたくなるほど、大歓迎なんです。

 その思いを語ったところ、ある方に「太地先生、先日は人間将棋に出ていましたし、棋士の方々ってすでにお忙しそうなのに、これ以上対局増えて大丈夫なんですか?」と心配していただいたことがあります。ただ私の個人的な感覚としては「もっと棋戦が増えても対応できます!」と感じています。これがもしサッカーやラグビー、マラソンのように肉体を酷使するスポーツなら間隔を空ける必要があるのかもしれませんが、棋士が疲弊するのは基本的に頭脳で1、2日ほど休めば回復していきますし、そもそもアスリートの方に比べれば、肉体の疲労は本当にわずかなものですので。

 藤井竜王や渡辺名人など対局数の多いトップ棋士は調整が必要でしょうが、現在開催されているABEMAトーナメントのようなチーム戦は棋士を知ってもらうきっかけになっています。例えば「週末開催・棋士によって自由参加の公開対局」などがあったらファンの方々に喜んでいただけるかな……と考えることはあります。斬新なアイデアがあれば、ぜひ――というのは強く発信したいところです(笑)。

 対局数が増えれば、ファンの人はもちろん、世間の方々にも将棋を認知してもらうきっかけになると信じています。渡辺名人と藤井竜王が超絶技巧を見せて伝統の名に恥じない名人戦、そして新しい形の将棋での魅力発信。両輪を回していければ理想だなと考えています。

#1#2からつづく>

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