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アンリが語るアーセナル無敗優勝…クラブ史上最高ストライカーが考える一番美しいプレーは「自分でゴールが狙えるとわかっているのに…」
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2023/04/15 17:00
2004年4月9日のリバプール戦・後半5分、値千金の勝ち越しゴールを決めたアンリ。アーセナル無敗優勝に向けた一撃だった
1つ目の要因は、独特なプレースタイルである。アンリは押しも押されもせぬ点取り屋だったが、ゴール前に張り続ける古典的なCFとは明らかに一線を画した。
左のワイドに開いてボールを受け、カットインしながらカーブのかかったシュートを右足から放ち、ゴールのファー側に叩き込むパターンを得意としていた。しかも司令塔を務める10番のデニス・ベルカンプも深く下がってチャンスメイクするのを好んだため、全盛期のアーセナルは、後に欧州サッカー界で一大トレンドになる「ゼロトップ」を早くも先取りするような戦術さえ具現化していた。
これを側面から支えたのが名脇役たちだ。両サイドではロベール・ピレスやフレドリック・リュングベリといった攻撃的MFがプレーしていたし、試合中には守備的MFのパトリック・ビエラやSBのアシュリー・コールが攻撃参加する場面も見られた。またシーズン後半からホセ・アントニオ・レジェスも加わったことにより、様々なポジションの選手が前方に攻め上がり、コンビネーションを駆使しながらゴールを狙うスペクタクルなプレーが展開されていた。アンリ自身は次のように解説している。
「あのチームの秘密は、選手が自由に、かつ滑らかに動いていく点にあったんだ。中盤の選手はスキル、テクニック、ビジョン、才能、速さといった要素を全て備えていたからね。試合の時には、対戦チームの選手がこっちのスピードやパスの速さについてこられない場面が何度もあった」
アンリが考える「一番美しいプレー」とは?
アンリは味方のためにスペースを作り出すだけでなく、アシストも積極的に行った。日本ではあまり知られていないが、'02-'03シーズンには20回も得点を演出し、プレミアのアシスト王にも輝いている。これは'19-'20シーズンにケビン・デブライネが並ぶまで単独最多記録になっていた。アシストをしなければ、1シーズンあたりの得点は40近くまで増えていたはずだと断言する識者は少なくない。だが本人にとっては、きわめて自然な選択だった。
「一番美しいのは、ゴールを決められるポジションにいる時に、あえて味方にパスを出すプレーさ。自分でも十分にゴールが狙えることがわかっているのに、ボールを譲ってチャンスを分け合うんだ」
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