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アンリが語るアーセナル無敗優勝…クラブ史上最高ストライカーが考える一番美しいプレーは「自分でゴールが狙えるとわかっているのに…」
posted2023/04/15 17:00
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
Getty Images
現在発売中のNumber1071号掲載の[228ゴールを生み出した男]ティエリー・アンリ「無敗優勝への至高の一撃」より内容を一部抜粋してお届けします。<記事全文は「NumberPREMIER」にてお読みいただけます>
「ハイバリー全体が、あんなにクレイジーに盛り上がるのを見たことはなかった。スタジアムが崩れるんじゃないかと思ったよ。
アーセナルでゴールを決めるといつも鳥肌が立つけど、あのゴールは特にすごかった。タイトルレースでの望みもつないでくれて、プレミアでそのまま首位の座をキープすることができたわけだから」
2004年4月9日、プレミア第32節。リバプールをホームに迎えた試合で、ティエリー・アンリはハットトリックを達成した。とりわけ後半開始5分に決めた2点目は、自身のキャリアを通じて、最も手応えのあるゴールの一つとなった。
アンリのように物腰の洗練された人物が、熱っぽい口調で振り返ったのには理由がある。本人が述べたように、このゴールはアーセナルというクラブ全体にとっても、決定的に大きな意味を持っていた。
世界で最も過酷とされるプレミアリーグの戦いを負け無しで乗り切り、イングランドでは約1世紀ぶりとなる無敗優勝を成し遂げる。そんな2003-04シーズンのアーセナルのキーマンを一人挙げるとするなら、やはりアンリになるだろう。
チーム全得点の半分近くを叩きだした上に…
まずは優勝への貢献度。アンリは同シーズン、プレミアで30ゴールを記録。チーム全得点の半数近くを叩き出し、2位に大差をつけて得点王にも輝いている。
さらにアンリは、アウェーのレスター戦を除いて38節中37試合に出場し、年間を通してプレーし続けた。プレミアにおける肉弾戦の激しさや、あらゆるチームのディフェンダーから執拗にマークされる状況を考えた場合、これも偉業であることは指摘するまでもない。結果、アーセナルはクリスマス以降から終盤にかけても戦力を維持し、首位をひた走ることができた。
ただし、アンリは得点源としてチームを牽引しただけではない。アーセナル史上最高のストライカーは、攻撃ユニット全体が進化するための触媒ともなった。