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[証言で迫る天才の本質]デニス・ベルカンプ「伝説のターンはこうして生まれた」

2023/04/14
絶妙なフリックで裏をとった場面。DFを振り払うと冷静にゴールへ流し込んだ
極めつけはニューカッスル戦のあのフリック・ターン・シュート――。誰もが記憶する美しいプレーを彼ほど多く演じた選手はいないだろう。才能か鍛錬か、足技か頭脳か。なぜあんな芸当が可能だったのか。

 アーセナル時代のデニス・ベルカンプは、イングランドのメディアで「褒め言葉が足らない」と言われ、よく「天才」と「完璧」の二語で讃えられた。いずれも、サッカーの世界では安易に用いられ過ぎる言葉だが、北ロンドンで11年間を過ごした元オランダ代表FWはその限りではない。識者や同僚も舌を巻く、限りなく理想に近い最高のプレーを事もなげに披露し続けた。

 プレミアリーグでの通算87得点が歴代最多というわけではない。しかし、華麗に決めたゴールの数ではプレミア史上最多と言ってもよいだろう。

 初の得点シーンからして名演だった。1995年9月のサウサンプトン戦、インテル・ミラノからの移籍を神の降臨の如く歓迎したファンが待ち望んだ初ゴールは、正確無比な先制ボレー。続くチーム3点目は、ハイバリーの観衆をさらに興奮させた。大物新戦力は中盤右サイドでパスを受けると、ほとんど足下に視線を落とすことなくドリブルでインサイドを上がり、ペナルティエリアの手前で右足一閃。立ち竦む2人の相手DFの間を突き抜けたボールは、ニアポスト内側を削るようにしてゴールに飛び込んだ。

「プレミア史上最高傑作」の呼び声高いゴール

 '97年8月のレスター戦で達成した移籍後初のハットトリックは、クオリティの高さで「パーフェクト・ハットトリック」と呼ぶに相応しい。エリア左角付近でショートCKをトラップして対角線上に1点目を放り込み、ワンタッチで裏に抜けて2点目。最後は肩越しに届いたロングボールを右足、続いて左足でリフティングしながらマークをかわしてファーサイドの隅を狙い、アーセナルの全3得点を叩き出している。

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photograph by Getty Images

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