Jをめぐる冒険BACK NUMBER
パリ世代欧州遠征で“アピール成功の7人”は誰? 大岩監督が「その場凌ぎになってはいけない」と語ったベルギー戦の“深い思惑”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byMutsu Kawamori
posted2023/03/31 11:05
ベルギー戦で追撃のゴールを決めた佐藤恵允。結果は1分1敗だが、この遠征はパリ世代にとって大きな経験となったはず
その際、キーマンのひとりとなったのが木村である。本来はセンターバックの選手で、後半から3バックの左に入ったが、擬似左サイドバックのような働きを見せる。左サイドからボールを持ち運んだり、ハーフスペースを駆け抜けたり、新境地を開拓するようなプレーだった。木村が振り返る。
「普段はドリブルをしないからどうしても不慣れで、落ち着きがないところがあった。慣れないことをやるときはミスをしないようにしながらも大胆に。メンタルの準備が大事だと思うし、普段から足もとの技術を磨いていけば、もっとやれると思う」
後半に盛り返した要因と、現状での差
後半に日本が盛り返した要因として、メンバー交代をしたベルギーが前半よりもクオリティを下げたことは否めない。また、最後にミスが絡んで決勝ゴールを献上したのはいただけないが、佐藤恵允と鈴木唯人のゴールでいったんは追いついた反発力と対応力は、一定の評価を与えていいだろう。
だからこそ、前半の不出来がもったいない。
前半における日本とベルギーの大きな差――。
それは「ビルドアップの差」と言えるかもしれない。
3バックの選手がドリブルでボールを持ち運ぶことで日本の選手を食いつかせ、パスコースを次々と生み出していくベルギーに対し、日本はセンターバックがボールを運べないからマークのズレを生めず、パスコースを作れない。
その結果、バックパスをするか、近くの選手に預けることしかできなくて、攻撃が行き詰まる。
もっとも守備陣からすれば、ボールを運んで相手に食いつかれたとき、必ず味方がパスコースに顔を出してくれるという“心理的安全性”が担保されないからリスクに感じる側面もあるだろう。
チーム全体でボールの持ち運びの意識と理解を高め、ビルドアップの“設計図”を共有することが、今後のテーマと言えそうだ。
大岩監督が考え、語っていたこととは
ベルギーの巧みなビルドアップによって数的不利を突きつけられた結果、皺寄せを受けたのが右サイドバックの中村拓海(横浜FC)だった。
相手の左シャドーと左ウイングバックの両方を見る形となり、後手に回り続けると、31分に守備力の高い内野と交代になってしまった。
ハーフタイムを待たずに3-4-2-1に変え、マークをはっきりさせればいいのに、と思わずにはいられなかったが、指揮官にも思惑があった。