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ダルビッシュ36歳はなぜ“後輩と対等でいられる”のか? 唯一の“昭和生まれ”、異端児と呼ばれた過去も…「人生のほうが大事ですから」 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/03/18 17:02

ダルビッシュ36歳はなぜ“後輩と対等でいられる”のか? 唯一の“昭和生まれ”、異端児と呼ばれた過去も…「人生のほうが大事ですから」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

「最後になるかもしれない」という思いを秘めた感謝のマウンド。その意味は何年か後にあらためて証明されるだろう

「野球なんで、そんなん気にしていても仕方ないですし、人生のほうが大事ですから。そんな野球ぐらいで落ち込む必要はないと思う。自分も含めですが、(準々決勝まで)休みもあると思うので、野球以外のこと、楽しいことをしたり美味しいご飯を食べたりしてリラックスしてほしいなと思います」

 野球“ぐらい”――。そう言い切れるほど簡単なものではないことは、求道者であるダルビッシュ自身が一番よく理解しているだろう。投球フォーム、投球技術、配球、トレーニングなど細部までこだわり、そこから逆算して食事や睡眠など私生活をも捧げているのがトップアスリートだ。しかし、そうであってもなお、野球は「手段」であって「目的」にあらず、人生は長く続いていく。目には見えないプレッシャーや、無責任な外野の声に心をすり減らす必要などない。「人生の方が大事」。その言葉を発したのが、36歳となってもメジャーリーグで活躍し続けるダルビッシュであることに大きな意味があった。

「後輩を肯定する」36歳の姿

 日本代表の投手陣は、最年少の高橋宏斗が20歳、佐々木朗希や宮城大弥が21歳。ほとんどが20代半ばで、昭和生まれはダルビッシュのみ。次に年長である今永昇太ですら29歳と、とにかく若いのが特徴だ。彼らが中学・高校と過ごしてきた時代はちょうど、「部活」の在り方が変化してきた端境期。代表勢の顔ぶれを見ても、厳然たる上下関係や勝利至上主義といった昔ながらの「野球部」で過ごしてきた選手と、自主性を重んじる指導者のもとで育ってきた選手が半々くらいと言った印象を受ける。

 加えて彼らは皆、アマチュア時代からスマホ一つで世界中のエースピッチャーの投球動画を見て学び、トレーニングや投球理論のさまざまな最新情報に触れてきた世代でもある。その画面の中の人だった憧れの存在が、自らその理論を説明し手本を見せてくれる。時には飲食を共にして悩みを打ち明け、他愛のない会話を交わし冗談を言い合える。楽しむ中で野球を追求していくことを「是」と教えてくれる。その時間は何物にも代え難い。

“球界の異端児”がチームの柱に

 ダルビッシュ自身は、佐々木や宮城と同じ年代の頃は、いわば球界の「異端児」だった。尖りきったそのスタイルに指導者や球界OB、先輩投手が眉を顰めたことも一度や二度ではなく、メディアにも多くを語らないことから、その周囲には常に緊張感が漂っているように見えた。

【次ページ】 ここで生まれ育ってそのお陰で今がある

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