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大谷もダルも朗希も由伸も…侍ジャパンなぜ“高卒”が多い?「甲子園を重要視しない指導」が増える今後はどうなる〈米代表は大卒が6割〉 

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西尾典文

西尾典文Norifumi Nishio

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photograph byL/Hideki Sugiyama R/Sankei Shimbun

posted2023/03/15 11:01

大谷もダルも朗希も由伸も…侍ジャパンなぜ“高卒”が多い?「甲子園を重要視しない指導」が増える今後はどうなる〈米代表は大卒が6割〉<Number Web> photograph by L/Hideki Sugiyama R/Sankei Shimbun

高校時代のダルビッシュ有(東北高)と大谷翔平(花巻東高)

 比較として、今回のWBCに出場するアメリカ代表の選手の経歴を調べてみた。マイク・トラウト(エンゼルス)、ムーキー・ベッツ(ドジャース)といった“高卒のスター選手”も存在しているが、メンバーの6割以上が大卒の選手だった。ドラフト指名の順位を見ても、1巡目の選手が際立って多いわけではなく、“高卒”、“ドラフト1位”が戦力になっている系譜は日本独特のものと言えそうだ。

“高卒”が育つ背景に甲子園の存在

 日本の野球界のトップ選手に高卒が多いのはなぜなのだろうか。その大きな理由の1つに、やはり甲子園大会の存在がある。

 春のセンバツ、夏の甲子園はアマチュア野球における最大のイベントで、その注目度は数ある学生スポーツの中でも群を抜いている。全国の高校が学校をあげて野球部の強化に取り組むのも甲子園大会の影響力が大きいからだろう。

 もし目標となる舞台がなければ、ここまで多くの高卒のスター選手が生まれることもなかったかもしれない。

 一方で、確かに甲子園大会の影響力が絶大であるがゆえに、投手の登板過多や過剰な練習や競争、勝利至上主義が議論に上がることも多い。

 第100回大会となった18年の夏に吉田輝星(金足農→日本ハム)が6試合、881球を投じたことが問題視され、20年からは球数制限を導入。1週間で500球以内という緩い制限ではあるものの、これによって1人のスーパーエースで甲子園大会を勝ち抜くことは実質的に不可能となった。19年夏の岩手大会決勝で佐々木朗希(大船渡)が登板を回避したことも、「選手の将来を優先した」ということで大きな話題となった。

 データ分析など知見が蓄積されたことで個別指導に能力を伸ばす球児も増えるなど、プロで活躍するためには、“必ずしも甲子園で活躍する必要はない”と考える選手や指導者が増えてきていることは間違いない。

 ただ、選手の将来を守ろうとするルールや風潮が厳しくなったことで、逆に成長スピードを阻害する可能性も否めないと本音を漏らすのは、NPB球団のスカウトだ。

【次ページ】 「高3春で最長3イニングという投手も」

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