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「自主練の鬼が指定校推薦」「選手権後にセンター受験→国立大合格」高校サッカー優勝校に見る文武両道「部活と勉強はお互いを…」
posted2023/03/06 11:20
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Kiichi Matsumoto
15年前は空き地で練習していた岡山学芸館サッカー部。岡山県勢初の優勝を果たした全国サッカー選手権のメンバーには、Jリーグのクラブ入団内定者は1人もいなかった。その快挙は衝撃を与えたと同時に、サッカーの競技性や高校生に秘めた可能性を感じさせた。
さらに、サッカー部をはじめとする岡山学芸館の部活動は、生徒不足に悩む学校や文武両道を目指す学校にもヒントを示している。サッカー部員は現在135人の大所帯。1学年20人までというような強豪校では一般的なセレクションを実施していないため、希望者は誰でも入部できる。チームを率いて15年になる高原良明監督は「人数を絞ってチームを強くする考え方もありますが、個人的にはサッカー部に入りたい生徒は全て受け入れるのが当然だと思っています」と語る。
補習を受けてから練習に合流→レギュラーの選手も
サッカー部員は約6割が寮や下宿生活で、残りの4割は自宅から通っている。地元の町クラブ出身の選手にも十分チャンスがあり、実際に選手権で優勝した時のレギュラーは5人が地元組だった。
岡山学芸館には中学までは目立つ存在ではなく、一般入試からサッカー部に入って選手権のレギュラーを勝ち取った選手が少なくない。最近の代表的な選手といえば、2018年にベスト16まで進んだ時に左サイドバックを務めた伊藤柊都選手。左足からの正確なキックに磨きをかけ、苦手だった対人プレーを自主練習で徹底的に鍛えたという。選手権ではアシストを記録し、岡山県大会では直接フリーキックも決めている。高原監督は「とにかく真面目で信頼できる選手でした」と振り返る。そして、こう明かした。
「伊藤は他の選手より、練習時間が少なかったんです。補習を受けてから練習に合流していました。努力家で文武両道を実践した象徴的な選手でした」
選手権Vメンバー「自主練の鬼」は指定校推薦で…
文武両道を掲げる岡山学芸館には、英語科や医進サイエンスコースなど様々な科やコースがある。その中で、伊藤選手は難関国立大学の合格を目指す「スーパーVコース」に進み、大学進学に向けて部活前に1時間ほど補習を受けていた。100分トレーニングを掲げるサッカー部は練習時間が短い。伊藤選手は限られた時間に集中し、全体練習後の自主練習を有効活用した。時間内で最大限の結果を出す考え方は学業も同じ。通学で電車に乗っている時間も無駄にせず、勉強にあてていた。