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「藤井聡太さんには気づけば“追い込まれている”」高見泰地七段が驚いた“誰も気づかない一手”「野球で言うと、大谷翔平投手のような…」 

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/02/25 06:00

「藤井聡太さんには気づけば“追い込まれている”」高見泰地七段が驚いた“誰も気づかない一手”「野球で言うと、大谷翔平投手のような…」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

王将戦七番勝負で防衛を目指す藤井聡太王将(現五冠)。高見泰地七段に「藤井将棋」について解説してもらった

「藤井さんと当たるところまで行くのは、最低でベスト16ぐらいに行くなど棋戦で活躍しなければいけないんです」

 その前提がある上で、高見は2022年に「銀河戦」という早指し棋戦で本戦ブロック、そして決勝戦で2度対局した。その時の感想について聞くと――高見は競馬が趣味ということもあってか、このように返ってきた。

「藤井さんと初めて対局したのはデビュー直後の2017年のC級2組順位戦でした。当時と今を比べると……競馬で言う“着差”が広がっているんですよ。対局前は、すでに強かった藤井さんよりも、追いかける立場の私の方が伸びしろがあるのでは、と考えていたんです。でも実際に対局してみると藤井さんの伸びがすごくて、差をつけられている感覚がある。対戦することだけを目標とするのではダメだと思わされましたし、自分はまだまだだなと痛感します」

この手を指されると嫌だったんです

 痛烈な印象が残っているのは、本戦ブロックでの対局である。

 相掛かりで進行した本局、先手の高見は「力戦になるような形で、自分自身は指したことがあるけど藤井さんは指したことがないであろう形」に持ち込んだが、最終的には後手の藤井に押し切られて投了した。ハッとさせられたのは感想戦でのことだった。

「自分が迷った局面で“どうすればよかったのかな”という話をした際に、“この手を指されると嫌だったんです”と藤井さんがおっしゃっていた。それは、自分の玉の近くから金将が離れる手だったんです」

この前の藤井将棋、どうだったの?

 ごく一般的な考え方だと、金将は王将を守る門番としての役割が重要視される。それだけに「玉形をまとめなければいけない状況なのに、金将が1枚玉から離れるというのは、全体のバランスを保って相手を抑えないといけないので、非常に難しいんです」と高見は語る。サッカーで言えば、センターバックが攻撃参加し、最終ラインが1枚減った状態で相手のカウンターもケアしなければならない状況だ。しかし……

【次ページ】 アクセルを踏み続けられて…

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