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「27歳でスーパーボウル」19歳の世界王者“THE D SoraKi”のダンス哲学「アーティストと同じ地位になった時に自分は死ねる」
posted2023/02/24 17:01
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Kiichi Matsumoto
THE D SoraKiは物心がついた頃から、いや、もっと前から踊り始めていた。
4歳年上の姉がダンスを習っていたため、母親のおなかの中にいる時にはもうレッスンやコンテストの場に出入りしていた。姉の影響でダンスは生まれた時から生活のすぐそばにあり、ダンスはしないが音楽が好きだった母のおかげでさまざまなジャンルの曲にも日常的に接していた。
小学1年生の頃からは気に入った楽曲をメモする音楽ノートをつけていた。最初のページに記したのは……。
「何を書いてあったっけなあ。当時はヒップホップばっかり聴いていたから。コモンの『Dooinit』だったかもしれないです」
小学生でコモン。Z世代にとってそれって当たり前の感覚なのだろうか。とにもかくにも、そうした音楽がダンサーとしてのSoraKiの血となり、肉となっていった。
「スクールではヒップホップを習っていたけど、小学生の時に他のジャンルも学びました。ロックやハウス、ポップもやって、それを自分のスタイルの中にギュッと収めたのが今の自分のヒップホップ。そこは強みになっていると思いますね」
「柔軟性」よりも「脳の感覚」
177cm、53kg。手も足も、指先まですらりと長い。天賦の才もあるのだろうが、日々踊り続けることで現在のスタイルに辿り着いた。普段の練習時間は1日4、5時間。体力づくりのために走るダンサーもいるものの、SoraKiは走らずひたすら踊る。
「走るのとダンスって別次元(の動き)すぎちゃって、自分はあまり意味ないかなと思っています。特に自分のスタイルは踊り続けることが一番。ただ、ストレッチは好きじゃないんですよ。股関節がバカ硬い。開脚できないし、地面に手が届かないですもん(笑)」
実際に前屈してもらうと、確かに手は足の先にも届かなかった。ダンス中の流れるような動きを見ると全く想像できないが、それとこれとは別なのだという。
SoraKiは指先から手首、肘と順番に曲げていく動きをゆっくり実演しながら言った。
「こうやってトゥッ、トゥッ、トゥッって動かすのを毎日頑張って続けて、関節の動きを脳の中に入れていく。そうすれば誰でもできますよ。だんだん慣れていきます。柔軟性っていうよりは脳の感覚なんだと思います」
小4から今に至るまで日本のトップダンサーであるYOSHIEのレッスンを受け続け、彼女のことは「ダンスのお母さん」と言うほど慕っている。体幹トレーニングもYOSHIEに教わったものを毎日継続中。日々の反復があれば、硬い体もあれほどしなやかに動かせる。