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「27歳でスーパーボウル」19歳の世界王者“THE D SoraKi”のダンス哲学「アーティストと同じ地位になった時に自分は死ねる」 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/02/24 17:01

「27歳でスーパーボウル」19歳の世界王者“THE D SoraKi”のダンス哲学「アーティストと同じ地位になった時に自分は死ねる」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

サッカー少年時代やダンスを始めたきっかけを語った世界王者THE D SoraKi(19歳)。撮影ではキレのあるダンスを披露した

 来年のパリ五輪ではブレイクダンスが初めて実施される。ジャンルは違えど仲のいいダンサーも多く、ブレイクダンスの状況次第では将来的にヒップホップダンスが五輪で行われるという噂も耳にしているという。

「オリンピック頑張ろうって人もいれば、マジどうでもいいって人もいると思います。スケートボードとかでも同じだろうし、それぞれの考え方でいいと思うんです」

 スポーツとダンスは別物、と考えているSoraKiでも、世界中の人の目に触れる機会を逃す手はない。日本代表としても、金メダルという点でも有力候補になるだろう。

「もし実際にそういう状況になったら、出るだろうと思いますね」

 そこには19歳とは思えない彼なりの使命感もある。日本においてダンスの地位を向上させたいという思いである。

「海外はダンサーじゃない人の方がうまい」

 海外の大会に行くと家族連れやカップルが当たり前の顔をして観にきていて、ダンスがより日常に溶け込んでいることをSoraKiは感じた。ダンスは中学の必修科目であり、最近はTikTokなどを通じてダンス人口は増えているはずなのに、日本ではあまりそういう状況を見かけない。週末の予定の選択肢にダンスバトルやコンテストが入る人は、まだあまり多くはないはずだ。

「みんなTikTokで踊ってるのもめっちゃいいじゃんと思います。でも、せっかく踊っているんだったら現場に来てほしいです。本物のスキルを見てほしい」

 一方でスキル偏重の日本のダンスシーンにも、それがダンス全体を敷居の高いものにしてしまっているのではないかという懸念を抱いている。

 スキルは大事。でも、それに縛られては何よりも大事な個性、スタイルが失われかねない。これはスポーツでも見られるように、あらゆるものを“道”に変換してしまう日本人の精神性もあるのかもしれない。

「海外に行くとダンサーじゃない人の方がうまかったりしますからね」

 ダンスは決して難しいものじゃないとSoraKiは訴える。

「音楽がかかってたら、体を揺らしたりリズムに乗るじゃないすか。それだけでダンスです!踊ってます!ってみんなに伝えたいですね」

 楽しくて、自由なものがダンス。どんな言葉よりも彼の踊りを一目見れば、それはすぐにわかるはずだ。

「ダンスの地位をもう一段階上げることが自分の目標です。ダンサーがバックダンサーじゃなく、アーティストと同じくらいの地位まで行った時に自分は死ねるのかなと思います」

THE D SoraKi(ザ・ディー・ソラキ)

2003年7月13日、神奈川県生まれ。4歳上の姉の影響で、4歳からダンスを始める。バトルや振付などさまざまなシーンで活躍するYOSHIEに小4から師事し、世界中のダンスバトルで活躍。昨年12月に南アフリカで行われた『Redbull Dance Your Style 2022 World Final』で日本人初優勝。Yoshikiとのデュオ『BetRay』でも活動中。The Dの呼称は、小学生の時に著名なフランス人ダンサーから呼ばれたことに由来、「(漫画の)ワンピースが好きだったのか、ダンスのDなのかはわからない」。177cm、53kg

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