「兒玉に限らず裸足の方が速かった選手は、種目を問わず活躍しているケースが多かったですね。つまり、記録が良い選手ほど裸足走が速い傾向にありました。スパイクの機能は日々進化している一方、それによって本来の足の機能を上手く使えなくなる選手もいて、裸足になることで本来持っている足の機能が発揮されたのかなと……。
　スパイクで守られていない状態で走るわけなので、裸足の方が接地する前にしっかり準備をするのだと思います。女子は足関節周りのケガが多いのですが、足底のアーチをできるだけ保ったまま接地できれば、接地の瞬間に足首がつぶれず地面のキャッチができる。その当時、彼女は裸足の方が接地が良かったのでしょう」

速くなるためなら何でもしたい

　その卒論は裸足の即時的な効果を示すだけであったものの、実験後から兒玉は裸足でのトレーニングを開始。裸足で走るのは衝撃が強く足への負荷がかかるため、アップやダウンを裸足で走ることから、徐々に芝生でミニハードル走、トラックでのダッシュ……とレベルを上げていった。

　裸足での接地には痛みも伴ったが、その分、短い時間で地面に大きな力を加えて、しっかり地面をキャッチする感覚が身についていったという。現在は練習の頻度こそ減ったが、フォームや接地のタイミングにズレを感じたときには、感覚を確かめるために裸足で調整している。

「最初は本当に効果があるのか半信半疑だったのですが、速くなるためなら何でもしたいと思っているので。年間を通して裸足の練習を取り入れることで、接地の感覚が変わってきた時には、やっぱりこの練習が良かったんだと思えました」

慣れって怖くて…

接地の感覚をつかむため、裸足での練習も大事にしているという

　兒玉はスパイクを履く時も、靴下を履かずにそのまま足を入れている。それは信岡からのふとした提案がきっかけだった。

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