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福島千里の日本記録に0.03秒差と肉薄、兒玉芽生23歳に聞いた“女子短距離界はなぜ低迷していた?”「難しい話ですよね」「男子に比べ女子は…」
posted2023/02/23 11:01
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by
Asami Enomoto
女子100mで日本歴代2位となる11秒24をマークした兒玉芽生(23歳)。女子短距離界を長年けん引した福島千里の日本記録に0.03秒まで近づき、13年ぶりの記録更新への期待も高まっている。
代表争いが熾烈な男子短距離界に比べて、女子は2016年のリオ五輪以降、五輪・世界選手権に個人種目での代表を送り込めていない。一方、昨夏のオレゴン世界選手権では4×100mリレーで11年ぶりに日本記録を塗り替え、明るい兆しも見えてきた。
現エーススプリンターの兒玉と、そのコーチであり、元スプリント女王の信岡沙希重に、女子短距離界の停滞の理由や、再躍進に向けたリレーの意義、そして日本記録を出すために必要な要素を聞いた。(全4回の2回目/#3、#4へ)
福島千里に次ぐ日本人2人目の11秒2台
2022年9月24日、岐阜メモリアルセンター長良川競技場のスタンドにはどよめきが広がった。
全日本実業団対抗選手権女子100m予選。3組目に登場した兒玉は、日本歴代2位となる11秒24(追い風1.3m)をマーク。福島千里に次ぐ日本人2人目の11秒2台で、パフォーマンス日本歴代3位タイの好記録だった。
だが、周囲の沸き立つ反応とは裏腹に、当の本人はいたってクールに振り返る。
「練習もよく積めていたので自信はありました。『最低でも11秒2台は出そう』と信岡先生と話していたので、最低ラインのタイムはクリアできたかなという感じですね。出さなきゃいけないというプレッシャーよりは、これから上に行くための過程として、冷静に捉えられたと思います」
男子100mは記録更新ラッシュの一方、女子は…
長年記録が停滞していた日本女子短距離にとって、2022年はターニングポイントと呼ぶにふさわしい一年だった。
6月の日本選手権では、兒玉との競り合いを制した君嶋愛梨沙(土木管理総合)が日本歴代4位タイとなる11秒36(+0.6)をマーク。福島を筆頭とする日本歴代10傑のタイムは、10年にわたり更新が止まっていたが、兒玉と君嶋がその時計の針を動かしたのだ。