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ダルビッシュも制球に苦しんだ? WBC国際球への違和感の正体…対応するために必要なもの「カーブは全然ダメ…使えない球種がある」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/02/08 17:00
2009年のWBC決勝で9回から登板したダルビッシュ有と捕手の城島健司。制球に苦しんだもののWBC連覇を果たした
日本球とWBC球の違いが、精密機械のようなダルビッシュの制球力も狂わせたことは、今後の日本野球の大きな研究テーマとなるはずである。
「ボールに対する対応は自分では出来ていると思う。ただ、(WBC球では)カーブが全然ダメ。使える球種と使えない球種があるので、それを早く見極めていかなければならないと思っている」
大会を前に豪州代表との強化試合に登板したダルビッシュは、WBC球に対する対策をこう明らかにした。また、メジャー球に慣れているボストン・レッドソックスの松坂大輔投手も、前回のWBCでの登板を振り返って「すっぽ抜けるのが怖くてスライダーが投げられなかったが、チェンジアップはよく落ちた。ボールに向いた球種を早く見つけてそれをうまく使うこと」と指摘している。
使える球種と使えない球種がある
今回WBCで使用されたボールは、メジャーの公式球と同じコスタリカで作られたローリングス社製のものだった。日本製のボールと比べると、ボールが滑り、縫い目の糸の高さが高く不揃いなため、変化球の曲がりが大きく変化も一定しないといわれる。
特に日本の投手が苦労するのがボールの滑り。WBC球など国際球は表面の皮をなめす際にほとんど油を使わない。そのため表面がつるつるしている。
日本のボールは油を使ってなめすために表面の感触はしっとりとしたものになり、そのしっとり感が指先になじみ、適度な引っ掛かりがあるためにボールをコントロールしやすいわけだ。そこがこの2つのボールの大きな違いであることは今までも指摘されてきた通りだった。
「もちろん明らかにボールの滑り方は違います。ただ、この滑るという感覚は慣れていくしかない。ダルビッシュが使える球種と使えない球種があると言っていたのは、球種によってその滑り方の違いがあるということでしょう。一般的には(縫い目に)ひっかけ系の球種、例えばスライダーとかカットボールはWBC球では使いやすい。その反面、ひねり系やフォークなどのはさみ系のボールは滑る分だけ抜けてしまう可能性が高くなる。ダルビッシュもフォークやカーブが抜けて制球がしにくいのはそのためだと思います」と解説するのは日本代表のブルペンをあずかった与田剛投手コーチだった。