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WBC日本代表“2つの不安”「塩見&近本らセンター不在」「先発多すぎ?」をどう考えるか…栗山監督の“采配ポイント”を冷静に分析
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKichi Matsumoto
posted2023/02/02 11:00
いずれもセンターを本職とする近本光司(左/阪神)、塩見泰隆(右/ヤクルト)。写真は2022年11月の侍ジャパン強化試合
前回大会までの「2次ラウンド」がリーグ戦ではなくなり、今回は「準々決勝ラウンド」と銘打たれた一発勝負となった。その分、1次ラウンドの試合数が1試合増えるものの、決勝までのトータルの試合数は1試合減っているのだ。
そう考えると、先発投手を前回以上に選出しなくていいはずである。
ではなぜ栗山監督は先発を厚くしたのか。
“不測の事態”にカギを握る2人
そこでキーになるのが球数制限である。1次ラウンドは球数が65球までと定められており、先発投手が早期交代する可能性が高い。そこで栗山監督は“第2先発”として、2枚の先発をつないでいく算段があるように見える。
しかし、である。球数制限下の大会の難しさとも言えるが、投手交代は想定通りにいかないのが「普通」といえる。試合の中で登板のタイミングが早まったり、遅くなったりということが往々にして起こり得る。そうした“登板のタイミングが約束されていない”リリーフ登板に、先発投手は慣れていない。イニング途中、それもピンチの場面でマウンドに上がる場合、先発登板時のメンタルとは大きく異なる。さらにリリーフ登板のちイニングまたぎで投げるとなれば、未経験ゆえ相当な負荷がかかる。先発して5、6回を投げきるのとは、勝手が異なるのだ。
前回大会ではそうした負担を減らすため、イニング完了を果たしてから第2先発につなぐという形をとっていた。1次リーグでは岡田、2次リーグでは平野というチームでもリリーフ専門の投手が、先発投手の早期交代やイニング途中での降板の穴埋めを担い、その後投げる千賀滉大や則本昂大にうまく繋いでいた。
その意味では今大会、宇田川優希と伊藤大海の2人が鍵を握ることになるだろうが、果たして“2人だけ”でうまく回すことができるのか。WBCのリリーフ経験を持つ投手がダルビッシュと松井しかいない中で、どのような起用を見せるのか注目したい。