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「バレーの留学生は難しい」その理由は? 最初は“ヘタ”だったドミニカ人留学生が春高バレーの頂点に立つまで「目標はサオリ・キムラ」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2023/01/12 17:00
春高バレーの優勝に貢献し、大会MVPにも選出された宮城・古川学園のタピア・アロンドラ(3年)。卒業後は日本の大学に進学する
コンタクトスポーツであるバスケットやラグビーは体格差がすぐに生かされやすいが、高校バレーにおいては、どうしても守備や細かいプレーが長身留学生のネックになると岡崎監督は言う。
「バレーの場合は、ボールを落とせないスポーツだから。外国人選手は狙われる。足が長いから、こんなところ(足元)にボールがきたらどうやって取るのって(苦笑)。バレーの留学生は難しい。だから閉鎖的になっている感じがします。本来はみんなもやりたいんじゃないですか。でもやったらチームが崩壊するかもしれないから、やらないんじゃないですかね。日本の選手たちとマッチしないと、バラバラになっちゃいますから。セッターも(外国人選手はトスが高いので)リズムが大変だし。
私はそれをするチャンスがあって、面白いと思ったからやっています。ただ、大変です(苦笑)。小さくてうまくて跳ぶ選手だったらいくらでもいたらいいですけど。みんな、大砲ですごいって言いますけど、レシーブができないから」
それでも日本での3年間でタピアは守備も上達した。「ドミニカではミドルはあまりレシーブ練習しないけど、日本はすごくするので、進歩したと思います」とタピアは頷く。
「高校の女子バレーは、ディフェンス力がなければベスト8から上にはあがれない。決勝に行くためにはブロック力。優勝するには、すべての要素が必要」というのが岡崎監督の持論だ。いくら攻撃力、ブロック力が高くても、ある程度の守備力がなければベスト8までに脱落してしまうと考えている。
否定的な意見も「外国の子に頼るのはあまり…」
もう一つ、バレー界で留学生が広まらない理由に、日本らしいプレースタイルへのこだわりや、選手育成への危惧があることも挙げられる。
岡崎監督とは日本体育大学時代の同期で、ともに強豪校の監督としてしのぎを削り、東京五輪日本代表コーチやアンダーカテゴリー代表の監督も務めてきた東九州龍谷高校の相原昇監督はこう話す。
「それぞれの考え方があると思いますが、僕は自分がセッターだったので、やっぱり日本はセッターで勝たなきゃいけないと思っているし、石川真佑や古賀紗理那のような、最後に決めきれるレセプションアタッカー(アウトサイドヒッター)に伸びてほしいし、オポジットでは左利きの、レセプションができるしっかりした選手が育ってほしい。そして真ん中には、やっぱり手に当たる大きいミドルブロッカーが育ってほしい。だから高校のレベルで外国の子に頼るかたちというのは、僕の中ではあまり……。やっぱり全員バレーをしていかないとダメだと思います」
その一方で、相原監督も、高校生の年代から外国人選手の高さやパワーを経験するメリットは感じている。
「今のサッカーもそうなってますもんね。選手が海外に出てやることによって、『あ、こういうレベルなんだ』とわかって、(代表が)国際大会で強くなっている」
今回の春高で東九州龍谷は、準々決勝で古川学園と対戦しフルセットの末敗れたが、身長185cmのミドルブロッカー・飯山エミリについて、「相手のドミニカの子とマッチアップさせたけど、逃げずに食らいついた。果敢に最後まで、ごまかして打つんじゃなく、シャットされてもいいからフルスイングしていく、ということはできたと思います」と成長を称えた。