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「セナの時代には走れた雨量でも…」日本GPでは“3時間ルール”適用、大雨の中のレースの見過ごせないリスク「季節の移行を考えるべき」
posted2022/11/13 17:01
text by
今宮雅子Masako Imamiya
photograph by
Getty Images
マックス・フェルスタッペンのタイトル獲得を大画面が伝えると、サーキットは戸惑いに包まれた。チャンピオンが確定するには1ポイント足りないのでは――?
大雨による赤旗中断が2時間以上も続いた鈴鹿では、最初のスタートから“中断時間も含めて最大3時間”でレースが終了するルールが初めて適用され、53周レースの28周を走行したところでチェッカーが振られた。したがってフルポイントは与えられないはずと、当のレッドブルチームも考えていた。しかし今シーズンからの新しいポイント表は“赤旗中断後にレースが再開されない場合”に適用されるもの。3時間の最後まで“走り切った”今回のレースではフルポイントが授与された。
フェルスタッペンのタイトルに異論を挟む者はいない。チャンピオンに相応しい勝ち方を誰もが讃えた。レース後の混乱も、本人が明るく受け流した点が幸い。「ルールは言葉が足りないのもいけないし、書き込み過ぎてもいけない」と、さらっとまとめたところも彼らしい。
大雨の中のレース、リスクは?
問題は10月の鈴鹿の天候だ。台風や大雨の影響で土曜の予選が不可能になったのは'04、'10、'19年の3回。'14年は日曜のレースが大雨で、ジュール・ビアンキの命を奪う事故が発生した。そして今年は、28周レース。10月の天候が安定したのは過去の話で、近年の日本GPで3日間の全セッションが快晴に恵まれた例は'13年まで遡らないと見られない。
F1の走行を不可能にする要因はマシンが巻き上げる水煙がドライバーの視界を遮ること。空力性能が発達した今日のマシンが生む水煙は凄まじく、アイルトン・セナの時代には走れた雨量でも走れないのだ。
冷たい雨の中、観客席の体感温度は10℃にも満たなかったという。傘もささず、レース再開をひたすら待ち、声援を送る鈴鹿の観客の姿は、世界中に感動を呼んだ。「たとえ28周でもみんなの前で走れた」「レースができなかったらひどい気持ちに陥るところだった」と、ドライバーたち。
日本GPの成功は“世界一”と評されるファンに支えられている。でも、彼らの清廉さ、F1への愛情に甘え続けるわけにはいかない。秋開催の伝統を捨てても、リスクの少ない季節への移行を考えるべきだ。