F1ピットストップBACK NUMBER
「君がいたから、僕たちも燃えた」アロンソとハミルトン、2人の王者に惜しまれつつ、4年連続王者ベッテルがついに引退
posted2022/11/25 11:01
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Image
ひとつの時代の幕が下ろされた。
セバスチャン・ベッテル——2010年から4年連続のワールドチャンピオンに輝いた名ドライバーが、22年の最終戦アブダビGPを最後に現役生活にピリオドを打った。
最後の一戦を前に、国際自動車連盟(FIA)は少し粋な図らいを設定した。グランプリ開幕前日に開かれたベッテルの公式記者会見に、かつてベッテルとタイトル争いを演じた2人の現役ドライバーを同席させた。ひとりは史上最多タイの7冠王者のルイス・ハミルトン。もうひとりは2005~2006年王者のフェルナンド・アロンソだ。
35歳のベッテルにとってハミルトンは年齢は2歳年上だが、ともに2007年にF1デビューを果たした同期であり、2010年代にタイトル争いを繰り広げた良きライバルだった。
いつしか芽生えたハミルトンとの友情
2人の頂点を目指した戦いは、時に事件へと発展するまで白熱したこともあった。2017年のアゼルバイジャンGPでは、セーフティーカー先導中、先頭を走るハミルトンが減速した直後に2番手のベッテルが追突。ベッテルがハミルトンにマシンを横付けして猛抗議した瞬間、ベッテルのマシンがハミルトンに接触した。
これにより、ベッテルには10秒のストップ・アンド・ゴー及び3点のペナルティポイントが科せられた。ぶつけられたハミルトンもピットインを余儀なくされ、2人そろって優勝争いから脱落。優勝のチャンスを台無しにされたハミルトンの怒りはレース後も収まらず、ベッテルはハミルトンにメールで謝罪した。
しかし、この衝突によって2人の関係がそれまでよりも深まったことも事実だったと、ハミルトンはアブダビGPの記者会見で明かした。
「セブ(ベッテルの愛称)はそれまでの僕にとって、ちょっと面倒な存在だったように思う。でも、あの接触から友情のようなものが芽生え始めた」
同席していたベッテルは気恥ずかしそうな表情を見せつつも、頷きながら、こう返した。