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古田敦也が飛車角落ちの羽生善治九段に勝利? ノムさんも奨励、ファンの渡辺明名人は村上宗隆から…スワローズと将棋の“深い歴史”
posted2022/10/31 17:00
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Takuya Sugiyama/Koji Asakura
今年のヤクルトスワローズは、高津臣吾監督の卓越した采配ぶりが際立ち、強力な打撃陣と安定した投手陣でほかのチームを圧倒した。中でも、日本人最多記録を樹立した56本塁打を放ち、18年ぶりに「三冠王」の栄誉に輝いた村上宗隆選手の大活躍は、優勝への大きな原動力となった。
そんなヤクルトでも、公式戦で低迷して最下位に落ちた谷間の時期があった(2017年、19年、20年)。
新人棋士の藤井聡太四段(現・五冠)が快進撃を見せていた2017年の頃、東京・千駄ヶ谷の将棋会館での対局で『みろく庵』(19年に閉店)に出前をよく注文した。デビューから29連勝した対局のときに食べた「豚キムチうどん」はメディアに報じられ、「勝負めし」として有名になった。その店はヤクルトの本拠地の神宮球場に近く、選手たちも出前をたまに注文したという。藤井の強さにあやかりたい、という思いもあったようだ。
「先を読む」という将棋と野球の共通点
ヤクルトの選手時代に主力選手として活躍し、後年に監督に就任したのは古田敦也さん(現・野球解説者)。
その古田さんが父親に将棋を習ったのは、小学3年で野球を始める前だった。成人になってからも、将棋を熱心に愛好していた。
古田さんの著書によると、将棋と野球には「先を読む」ことで共通点があり、将棋と似ているから野球が好きになったようだ。将棋で経験した戦術や駆け引きは、野球に対する考え方や捕手という役割において、大いに参考になったという。
古田さんは1989年にドラフト指名され、ヤクルトに入団したとき、90年から指揮を執ることになった野村克也監督の著書をすべて読み、野球についての基本的な理論を学んだという。
試合に出場するようになってからは、野村監督に呼ばれてベンチではすぐ近くの席に座り、「打者として投手や捕手の心理を考えて打て」など、いろいろなことを教わった。そして、監督が提唱する「ID野球」の申し子として、正捕手の地位を不動のものとした。
ノムさんも将棋を奨励、古田の棋風は…
野村監督が将棋を指すことはなかったが、将棋は戦術を読むことに役立つとして、選手たちに奨励した。著書や語録には将棋に関連した言葉が多い。「日本における野球の基本は将棋にある」とも語っていた。
古田さんの現役時代には、ヤクルトに将棋好きの選手がいて、練習の合間やオフによく指したという。主なメンバーは、広澤克実さん、岡林洋一さん、藤井秀悟さんなど。みんないい勝負だったが、古田さんが少し強かったようだ。