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古田敦也が飛車角落ちの羽生善治九段に勝利? ノムさんも奨励、ファンの渡辺明名人は村上宗隆から…スワローズと将棋の“深い歴史”
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byTakuya Sugiyama/Koji Asakura
posted2022/10/31 17:00
渡辺明名人と古田敦也。ヤクルトの“考える野球”と将棋は意外と深い関係にある?
私こと田丸九段は、古田さんの将棋を見たことがある。野球では守りの要の捕手なのに、自陣をほとんど守らない猛烈な攻め将棋に驚いたものだ。
飛車角落ちの記念対局で羽生九段に勝ったことも!
古田さんは将棋界やプロ棋士と交流があり、羽生善治九段、谷川浩司十七世名人、清水市代女流七段らに、飛車角落ちの手合いで指してもらったことがある。ほとんど負けたが、観客がいる将棋イベントの壇上での記念対局で羽生に勝った。相手玉の詰みが見える局面でも、「《羽生マジック》のような奥の手があるのか?」と疑心暗鬼になったという。
2004年には日本将棋連盟から三段の免状を贈呈された。
ちなみに古田さんの夫人で、元フジテレビアナウンサーの中井美穂さんは2001年に半年間、NHK教育テレビ(現・Eテレ)で毎週日曜日の午前10時から放送された『将棋講座』(現・将棋フォーカス)の番組で司会を務めたことがあった。
中井さんは将棋をまったく知らなかったが、将棋を指さない視聴者に興味を持ってほしい、という趣旨で依頼された。
毎週の将棋番組で、駒の動かし方などの基本的ルールを、講師の棋士から指導された。やがて棋譜の符号(7六歩、5二飛など)を理解し、矢倉、棒銀、穴熊といった戦法名を覚えた。講師と実戦ができるようにもなった。時には、古田さんからアドバイスを受けた。
中井さんがNHKの将棋番組に出演していたとき、意外なことが起きた。古田さんが試合中に、スタンドから「古田、将棋を見ているぞ」とやじられ、審判員からは「あの将棋、何とかしろよ」と言われたそうだ。しかし、それは古田さんの将棋のことではなかった。
中井さんが内容のよくない将棋を指さないように、しっかり教えろという意味だった。古田さんは「とても恥ずかしかった」と苦笑したという。
現役プロ野球選手でも愛棋家は多い
最近でも野球選手と将棋で話題になったことがあった。プロ野球選手の「将棋王」を決める勝負が2020年に行われ、「ニコニコ生放送」でライブ配信されたのだ。
4人の出場者の中から、平田良介選手(中日)と丸佳浩選手(巨人)が決勝で対戦した。そして、熱戦の末に平田選手が勝ち、初代「球王」になった。
2021年には山川穂高選手(西武)、嶺井博希選手(DeNA)ら6人が出場し、平田選手が決勝で西口直人選手(楽天)に勝って連続優勝した。
平田選手は優勝インタビューで、「歩が関わらない将棋はありえない。僕は野球でそういう存在でありたい」と、自身を将棋の駒の歩に例えて語った。