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〈阪神・岡田新監督有力〉ポスト矢野が残り3試合になるまで全く報道されなかった理由は コロナ禍のメディア統制が示す野球界の未来 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2022/09/27 11:04

〈阪神・岡田新監督有力〉ポスト矢野が残り3試合になるまで全く報道されなかった理由は コロナ禍のメディア統制が示す野球界の未来<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

開幕前から、今シーズン限りでの退陣を表明していた矢野監督(中央)

 感染予防のために著しく制限される対面取材に代わって、情報ソースの主流となっているのが球団からの「サービス」である。試合中に活躍した選手のコメントや試合後のヒーローや監督の囲み取材すべてを球団広報部が配信するなどして取り仕切る。あらかじめ決まった取材対象に、決まった人数だけしか参加できず、多くの球団は取材時に、その音源を共有する形で全社平等に「サービス」を享受する。そこに独自性はないが、取りこぼす恐れもない。

 しかしルールを破ると待っているのは先のような制裁である。つまり記事を書くに困らないだけの材料は球団が手配、用意してくれるが、それは球団の「お願い」を聞くことが大前提。コロナ禍で球団側に大きくパワーバランスが傾き、すっかり生殺与奪の権利を握られている。

「番記者」は消えるのか? 紙媒体の不況にコロナ禍が追い討ち

 裏を返せば組織に密着することができない以上、取材者は番記者である必要もない。ほとんどの社は東京、大阪の複数本社制なので、例えば関東地区で行われる試合は東京本社の記者が、関西地区では大阪本社の記者が主に取材すれば、出張経費は大幅に削減される。現場にさえいれば取材音源は手に入るから、わざわざ番記者がいかなくてもエリア主義で事足りるというわけだ。

 一方、コロナ禍とは直接の関係はないが、数年のうちに消えるのではないかと言われているのが「先乗りスコアラー」である。スコアラーは自軍の傾向を分析する「チーム付き」と、対戦相手を分析する「先乗り」に職務が分かれる。先乗りの基本は1週間後に対戦するチームの試合を見る。火曜日に対戦するとしたら、先発投手はその前の登板も火曜日が多いからだ。3試合は先発投手を主に分析し、直前の3試合は打者やリリーフ投手の分析に軸足を移す。その資料をまとめ、対戦当日にミーティングで選手に必要な情報を伝える。

 ところが、そんな「先乗り」制度が岐路に立たされている。DeNAはスコアラーの呼称を「アナリスト」に変更し、1週間密着型の先乗りを廃止。アナリストは球団本部で映像を解析し、AIも駆使して戦略を練る。またソフトバンクは撮影専門スタッフのみを対戦が近いチームの試合に派遣。やはり送られた映像は本部で解析するシステムだ。

【次ページ】 球界の「007」も出張召し上げの厳しい現実

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