酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
〈沢村賞候補の成績比較〉山本由伸パ初の2年連続が濃厚だが… サイ・ヤング賞と同じく「指標見直し」「両リーグ1人ずつ選出」しては?
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/09/21 17:02
山本由伸は2021年、2022年と2年連続の沢村賞受賞なるか
<投球回数 - 200イニング以上>
1山本由伸(オ)179
2高橋光成(西)168.2
3森下暢仁(広)168
3戸郷翔征(巨)160.2
5伊藤大海(日)153.2
この基準をクリアしたのは2018年の巨人・菅野の202回が最後だ。今後、クリアする投手が出てくるかどうか。
<奪三振 - 150個以上>
1山本由伸(オ)188
2佐々木朗希(ロ)168
3千賀滉大(SB)142
4戸郷翔征(巨)141
5青柳晃洋(神)128
規定投球回数未達がほぼ確定したロッテの佐々木が2位につけている。今年の異能の活躍を象徴する数字だ。巨人の戸郷も150個をクリアする可能性がある。
<防御率 - 2.50以下>
1山本由伸(オ)1.71
2加藤貴之(日)2.00
3青柳晃洋(神)2.07
4西 勇輝(神)2.18
5高橋光成(西)2.24
6大野雄大(中)2.49
この基準は現時点で6人がクリアしている。山本由伸は9月17日のソフトバンクとの首位攻防戦で完封勝利。パ・リーグのエースであることを見せつけた。
<QS数 %はQS率(QS試合数÷先発試合数)>
1山本由伸(オ)19 / 24登板 79.2%
2戸郷翔征(巨)15 / 23登板 65.2%
3森下暢仁(広)14 / 25登板 56.0%
4大野雄大(中) 13 / 22登板 59.1%
5田中将大(楽)13 / 23登板 56.5%
投手の安定感を示すQS数、QS%両方で山本が群を抜いている。
<沢村賞の7つの指標をクリアした数>※勝率は暫定的に12勝以上
山本由伸(オ)3(勝率・奪三振数・防御率)
青柳晃洋(神)2(勝率・防御率)
高橋光成(西)2(防御率、登板数)
森下暢仁(広)1(登板数)
戸郷翔征(巨)1(勝率)
大野雄大(中) 1(防御率)
加藤貴之(日)1(防御率)
西 勇輝(神)1(防御率)
佐々木朗希(ロ)1 (奪三振数)
沢村賞の「昭和の価値観」は時代に合っていない?
クリアした数がこれだけ少ないことを問題視するよりも、沢村賞の指標が、現在のNPBの投手起用の実態から乖離しているとみるべきだろう。
今季の沢村賞は山本由伸の連続受賞が当確か。シーズンを通してエースとして活躍し、投球内容も抜群だった。昨年はポストシーズンやオリンピックも通して3500球以上を投げて投球過多が懸念されたが、今季も健在だった。ただ現時点では投球数は2713球であり、最終的に昨年よりやや少なくなりそうだ。
2年連続の受賞となれば2017、18年の菅野以来。史上6人目、パ・リーグでは史上初となる。
その一方で――先発完投型の投手を良しとする沢村賞の「昭和の価値観」は、いよいよ時代にそぐわなくなっている。