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[偉大なる“屁理屈”の系譜]名将本が愛されるワケ
posted2022/09/10 07:02
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Wataru Sato
二人の野球人を繋ぐ共通点。それは、「ベストセラー本の生みの親」という一面だ。野球ファンのみならず、ビジネス界からも熱烈に支持される落合本・野村本の数々。プロ野球ウォッチャーでもある時事芸人が、“オススメ名将本”から人気の秘訣を読み解いた。
今年は『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(江本孟紀)が世に出て40周年。当時小学生だった私は父が買ってきたこの本を夢中で読んだ。まだよくわからない下ネタもあったけどエモやんのおかげでプロ野球がさらに好きになった。
そのなかでよく出てきたのが野村克也でもあった。あの頃は元名選手で名解説者というイメージだった。
'84年にテレビ朝日が開発した「野村スコープ」は野球理論の楽しさを老若男女に教えてくれた。ストライクゾーンを表示した画面がテレビに出現。次の球はここ、とノムさんが予想するとピッチャーは面白いようにそこに投げた。バッターの結果も予想どおり。
となると野球好きの少年は素朴な疑問を抱く。「野村克也はなぜユニホームを着ないのか? 監督として見たい」と。調べてみたらノムさんは'77年に南海監督の座を追われて以来、一度も監督の座についていない。どうやら関西のドンと言われた鶴岡一人と確執があったらしい。
もったいないなぁとずっと思っていたら、なんと'90年にヤクルトの監督に就任。受託したノムさんも立派だったが球界の政治事情なんか関係なくオファーしてしまうヤクルトが偉かった。しがらみのない「東京」「セ・リーグ」という逆転弾。ヤクルトの良い意味での軽さが球史を変えたのだ。