- #1
- #2
Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
「最初聞いたときは、ちんぷんかんぷんで…」イチロー指導の智辯和歌山が実現した”奇跡の走塁”《甲子園優勝校の特別秘話》
posted2022/08/12 17:00

2020年12月2日から3日間、イチローは智辯和歌山の野球部を指導した
text by

石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Naoya Sanuki
このほうがよくない? その一言と共に提案された“幻のプレー”が全国制覇の1カ月前に実現していた。その教えを守り続けた智辯和歌山高校・野球部員たちの成長と継承の物語。
Sports Graphic Number1049号(2022年4月14日発売)『イチローが伝える野球って何だ?』を特別に無料公開します。※肩書きなど全て当時のまま(全2回の前編/後編へ)
Sports Graphic Number1049号(2022年4月14日発売)『イチローが伝える野球って何だ?』を特別に無料公開します。※肩書きなど全て当時のまま(全2回の前編/後編へ)
昨夏の甲子園を制覇した智辯和歌山とイチローが紡いだ物語、まずは登場人物を覚えてほしい。智辯和歌山の選手は3人――どこまでも生真面目な主将、1番センターの宮坂厚希。チームきっての元気印、2番セカンド、左打ちの大仲勝海。9番ショート、俊足好打に堅守が加わる大西拓磨。この3人がそれぞれの役を完璧に演じたからこそ、あの“幻のプレー”は生まれた。
2020年の冬に遡る。
イチローを取り囲む智辯和歌山の選手たちは戸惑っていた。頷くもの、目が泳ぐもの、まったく表情が変わらないもの――。
「最初にこの話を聞いたときはちんぷんかんぷんで、頭の中がはてなマークだらけでした。でもよくよく説明を聞いて考えてみたら、ああ、なるほど、確かにそうだなと思って、すぐにチームとして練習してみようということになりました」(主将の宮坂)
「何を言っているのかはすぐにわかったんですけど、すんげえ考え方するんだなって、そんなことを思いつけるイチローさんのほうにビックリしました」(俊足の大西)
「イチローさんの話を聞いてすぐに理解できましたし、何をしなくちゃいけないのかもわかりました。ただ、僕の足だと練習でいくらやってみてもセーフにならないんで(笑)、足の速い宮坂や大西じゃないとムリだなと思いました」(元気印の大仲)
イチローが伝えた”幻のプレー”
イチローが智辯和歌山に伝えた“幻のプレー”――このとき、イチローは選手たちにこんな言葉で語りかけている。