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藤井聡太“10代で9期連続栄冠”は大記録 「人生を変えてくれた一人が藤井さん」盟友・永瀬拓矢相手の棋聖防衛…流れを変えた妙手とは 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2022/07/22 11:04

藤井聡太“10代で9期連続栄冠”は大記録 「人生を変えてくれた一人が藤井さん」盟友・永瀬拓矢相手の棋聖防衛…流れを変えた妙手とは<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

藤井聡太と永瀬拓矢の棋聖戦は見どころが多かった

 棋聖戦第1局は振り駒の結果、藤井が先手番になった。

 藤井は武器にしている相掛かりの戦型に持ち込み、序盤で作戦勝ちしたと思われた。ところが、16時17分に同一手順が繰り返される「千日手」が生じて無勝負となった。私こと田丸は、藤井が打開して十分に指せると思ったが、何か気になる順があったようだ。

 規定によって、30分後の16時47分に先手・後手を入れ替えて「指し直し局」が再開されたが、17時38分に序盤の局面でまたも千日手が生じた。

「再指し直し局」は18時8分に藤井の先手番で再開され、今度は熱戦が繰り広げられた。そして、永瀬が寄せ合いを制し、21時42分に先勝した。

 タイトル戦で2回の千日手が生じたのは過去に3例あったが、再指し直し局はいずれも後日に行われた。同日の再指し直し局は、この棋聖戦第1局が初めてだった。

永瀬は帰京してから練習将棋を指したという

 藤井と永瀬は同日に3局も指し、疲労をかなり感じたと思われたが、対局中はそれほどでもなかったようだ。

 練習将棋を毎日のように行っている永瀬は、棋聖戦第1局の翌日も帰京してから、午後に指したという。まさに「将棋の虫」だ。

 棋聖戦第2局は6月15日に新潟市で行われた。角換わり腰掛け銀の戦型から、激しい攻め合いになった。難解な最終盤の局面で、藤井が△9七銀と打って捨てたのが寄せの妙手だった。詳しくは図面を載せて後述する。

10代での9期連続の栄冠という大記録

 藤井は「第1局は完敗、第2局も早い段階で苦しくした」と語ったが、第2局の勝利によってシリーズの流れが変わった。第3局は7月4日に千葉県木更津市で行われた。角換わり腰掛け銀の戦型から、藤井が寄せ合いを制して勝った。最終盤で通算19手もの詰み手順は、藤井にとって当然でも見事だった。

 第4局は7月17日に名古屋市で行われた。相掛かりの戦型から、藤井が序盤で2歩損する展開になった。それは従来の常識を覆す新手法だという。あるベテラン棋士は「おじさんには、とても理解できない」とぼやいていた。藤井は中盤で永瀬の攻めをかわすと、終盤で厳しい寄せで相手玉に迫っていった。最後は攻防に利かす△3六銀が決め手となった。

 藤井棋聖は棋聖戦第4局で永瀬王座に勝ち、3勝1敗として棋聖3連覇を達成した。

【次ページ】 藤井将棋のすごみを象徴する銀捨ての寄せの妙手

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