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「まわしを取るな」元横綱・稀勢の里が明かす”はず押し”の意外な真実とは?「腕に力を入れなくても、相手が吹っ飛ぶ」

posted2022/07/16 11:03

 
「まわしを取るな」元横綱・稀勢の里が明かす”はず押し”の意外な真実とは?「腕に力を入れなくても、相手が吹っ飛ぶ」<Number Web> photograph by KYODO

稀勢の里は幕内通算85場所、714勝453敗、優勝2回。写真は'10年十一月場所2日目、歴代2位の63連勝中だった白鵬を寄り切りで破った場面。数々の名勝負を演じた白鵬については次回で解説予定

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二所ノ関寛

二所ノ関寛Hiroshi Nishonoseki

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元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方が、6月に「二所ノ関部屋」を開いた。部屋の目標は「全員が関取になること」。そのため弟子たちには何を伝授していくのか? 新連載では、親方が見てきた名力士の技術を解説し、弟子たちの指導につなげていく。第一回は親方自身、「稀勢の里」について。

 中学を卒業し、私が鳴戸部屋に入門してからの10年間、親方(元横綱・隆の里)に言われ続けたのは「まわしを取るな」のひと言です。みなさんにしてみれば、びっくりですよね。相撲なのに。稽古場でまわしを取ることは絶対に許されませんでした。

 その心はなにか。親方の考え方としては「四つ相撲はいつでも取れる。そのかわり、突き押しの威力、馬力は若い時にしか鍛えられない」というものでした。私はその姿勢を徹底した結果、本場所では馬力を生かし、差し身を取る形で番付を駆け上がりました。親方の教えは正しかったのです。

 自分の経験では、対戦相手の技術がいくら高くても、馬力がなければ恐れるに足らずという印象でした。また、四つ相撲はケガのリスクが増します。故障を防ぐ意味でも、押し相撲の徹底は理にかなっています。

相手の右脇の下に左手が入れば勝てる

 そして、自分の馬力を最大限に生かせる形が、左の「はず押し」でした。はず押しとは、相手の脇の下に手を入れることで体勢を崩しつつ、攻め込んでいく技術です。

 実は、自分が最初に相撲を取った時の写真を見ると、左のはずを使っていました。もともと左腕が強く、それを本能的に使いまくっていたと思われます。番付が上がるにつれ「なぜか分からないけれど、相手の右脇の下に左手が入れば勝てる」という感覚がありました。

 ところが、幕内上位との対戦が増えてくると、押しが安定せずに勝ち星が伸びなくなります。自分に軸がないから、相手の調子が悪ければ勝ち、良ければ負けるという、相手次第の相撲になる。そこからです、自分なりに身体の使い方を研究したのは。24、25歳くらいの時でした。

【次ページ】 腕に力を入れなくても、相手が吹っ飛ぶ

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