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「ホップするストレート」「カーブが止まる」吹き荒れる“マリンの風”を味方につけた名投手とは? “歴代1位”小野コーチ「風は友だち」
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph byKYODO
posted2022/07/05 11:00
小野投手コーチが「風の強い日のジョニーさんはすごかった」と振り返る黒木知宏の投球(写真は最多勝をマークした1998年)
現役投手で最もこの風と付き合いが長いのはクローザーの益田直也投手である。7月3日現在で、マリンでの登板数は320試合に達した。
「強風の時は通常よりシンカーは落ちやすく、ストレートは上に浮くイメージがある」
「風は強い方が好き」とは、さすがマリーンズの守護神。先発と違い、毎試合のように登板する可能性があり、毎日、違う風と向き合う過酷なポジションだ。おのずと風と仲良く付き合う方法を身につけている。
益田はキーワードとして相手打者のフライを挙げた。
「風が強いとフライは上がっても伸びない。なのである程度、思いっきり投げることが出来る」
この益田の見解には注釈がある。ライナー性の打球は風の影響をあまり受けずに、逆に風に乗って伸びることがある。しかし高く上がるような打球を打たせることができれば、風の影響を強く受けるため飛距離が出にくい。強風の日ほど、高いフライを打たせることを意識しているという。
益田にとって理想の風速は「8メートルから10メートルの間」。マウンド上では基本的に向かい風。風がバックスクリーンにぶつかって戻ってくるのでストレートは伸び、シンカーは落ちる。ただし、どの投手もストレートが伸びるわけではない。
「キレイな回転のストレートを投げる投手の方が伸びると思う。少し動いたりする投手はそうでもないのでは」
そして時折、吹くのが横風。一塁側から三塁に向かって吹く風だ。このような時は横変化のボールが曲がる。ただし曲がりすぎることもあり、制球に苦しむこともある。そういう時は「高めは厳しい。ストライクが入らないボールは低く投げるようにしている」と益田は話す。
フォームも微調整している?
もう一つ、強風の時に投げる上で益田が意識をしていることがある。それはフォームの微修正だ。「風が強い時はグラッとくる」と左足を上げる時にバランスを崩さないように修正を施す。「多少ですけど、フォームを変える。足を上げる間を短くすること。身体のひねりを少し小さくすること。あと重心を下にする必要があるので膝を気持ち程度、深く曲げる」と工夫している点を語ってくれた。