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「ホップするストレート」「カーブが止まる」吹き荒れる“マリンの風”を味方につけた名投手とは? “歴代1位”小野コーチ「風は友だち」
posted2022/07/05 11:00
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph by
KYODO
千葉ロッテマリーンズの本拠地・ZOZOマリンスタジアムには今年も強風が吹いている。
4月26日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦は今年最大の風速19メートルを記録。6月24日からのオリックス・バファローズ3連戦ではいずれの試合も10メートルを超える強風が吹いていた。
試合中継やテレビニュースなどでよく取り上げられる風速計はバックスクリーン最上部のグラウンドから27メートル地点に設置されており、風速の表示は30秒更新で更新前の1分間の平均風速(計測は1秒毎)が表示されている。日本で風速が表示されているプロ野球の本拠地スタジアムは他にはない。
つねに強風が吹く可能性があるスタジアムを本拠地にしているマリーンズの投手陣はこの風を味方につける必要がある。小野晋吾投手コーチはこれまで出会った数々のチームメートの中で、とりわけ風を味方にしていた投手として1998年に最多勝のタイトルを獲得するなどマリーンズのエースとして君臨した黒木知宏投手の名前を挙げた。
「ジョニー(黒木知宏氏の愛称)さんは風が強い日は本当に凄かった。特にストレート。ボールがホップするように浮き上がっていた。今までたくさんの投手がこの球場で投げている姿を見たけど、風が強い日のあのストレートのホップの仕方は一番かな」
また、サブマリン投法で知られる渡辺俊介投手もマリンの風を味方につけた投手だったと続ける。
「よくみんなが『カーブが止まる』と表現をしていた。具体的に言うと風に押し戻されて止まったように感じるのだと思う。あのボールも打者からしてみれば厄介だったと思う」
小野コーチ「あの日は序盤で風の傾向を掴めた」
一方の小野コーチ自身も2001年4月8日のホークス戦で93球完封勝利をしている。その日も15メートルを超える強風が吹いていた。
「基本的にマウンド上では向かい風。自分は両サイドに変化球を投げて勝負するピッチャーだから風の影響は受けやすかった。風が強すぎると変化球の曲がりが大きくなる。スライダーは特に影響を受けやすくて基本的にボールになってしまう。シュートをゾーン内で勝負をした。曲がりが読みづらく打者にとって嫌だったと思う。あの日は試合の序盤で風の傾向を掴めて完封が出来た。振り返っても一番、風を利用できて結果が出た試合だった」
現役時代の小野投手コーチは通算85勝のうち50勝を本拠地で挙げている。マリンでの勝利数は現時点で成瀬善久投手と並んで歴代1位だ(渡辺俊介49勝、黒木知宏37勝)。だから今も若い投手には「つねに風を利用しよう」と伝える。マリン独特の風の特徴を、経験を積みながら把握し、過去に出会った幾多のチームメートたちのように“風と友だち“になることを求める。