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監督の激怒と公開説教…「サッカー人生、終わったかもしれんわ」 それでも鎌田大地はなぜ「市場価値31億円」の高評価なのか〈インタビュー〉
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/06/14 11:00
EL制覇を果たし、日本代表でも存在感を放つ鎌田大地がインタビューに応じてくれた
「次のヘルタとの試合、ホンマ大事やな。オレのサッカー人生がかかってるわ」
ヘルタ戦ではスタメンに復帰して、いつもの左シャドーのポジションで攻撃を牽引して、アシストをマーク。4-1の快勝に貢献した。試合後に個人マネージャーに電話して開口一番、こう伝えた。
「まぁ、どうにか耐えたやろ」
正念場となった試合で結果を残せたのは何故なのか?
明確な答えを導き出すのは難しいと鎌田は考える。実際、あの試合の前の夜はいつになく緊張していたのだから。とはいえ、並々ならぬ意気込みで臨んでいたのもまた、事実だ。
結果で見返さなければ単なるダサいヤツ
「何故なのかを聞かれても……僕はそういう星の下に生まれているんじゃないですかね(笑)。僕は両親のどちらに似ているかというと、性格では圧倒的にお母さんに似ていて。お母さんは昔からビンゴゲームなどで一等を取ったり、めちゃくちゃ勝負強いので、その遺伝なのかなぁ……。
ただ、そういう大事な試合で、結果を残せるのは自分の強みだと思っています。あの試合もそう。『オレはサッカー選手なんだから、サッカーの結果で見返さなければ単なるダサイやつだ』と強く思っていましたね」
そして、その次の週。木曜日に組まれていたELベティス戦でも、日曜日のリーグのボーフム戦でも、得点を記録した。ヘルタ戦から3試合続けてゴールに直接絡んだことで、自身の価値を監督に改めて証明してみせた。
もちろん、攻撃だけではない。
そこからチームはELを勝ち進んで優勝へと進んでいくわけだが、EL準々決勝のバルセロナ戦と準決勝のウェストハム戦後には、監督からこう言われた。
「守備でダイチが果たしてくれた仕事は、チームディフェンスを機能させる上でもっとも大きな意味を持っていた」
ELではチーム内最多得点を記録した。それほどわかりやすい活躍をしながらも、現在のドイツのなかで守備にもっともうるさいと言われる指揮官のタスクをしっかりとこなせたことに大きな意義はあった。
“お利口さん”な選手になりたくなかった
だが、1つだけ疑問が残る。
ケルン戦の後、監督から叱られるリスクを覚悟した上で自分の想いを言動で表わしたのは、なぜだったのか。
「今だから言えますけど、海外でよくイメージされる日本人像――“お利口さん”な選手になりたくなかったんですよね。監督から『こいつはスタメンで出ることが多いけど、たまにコロッと代えても文句は言わないだろう』と思われるような選手にはなりたくなくて。あの時は、スタメンから外されたり、交代させられても甘んじて受け入れるようでは、この世界で上を目指す選手としてはダメだろうと考えたので。
そういう意味で、僕は日本人らしくないというか、ヨーロッパの選手みたいな振る舞いだったのかもしれませんね」
小さくまとまりたくないし、負けていられない
あれほどの怒りを買ったことだけは予想外だったが――冷静に判断した上で、あのような行動を取ったのにはもちろん理由がある。
「フランクフルトの歴代の主力の中でも、アレ、ヨビッチ、レビッチ(*2017-18シーズンのDFBポカール優勝時に君臨した前線トリオ)などがそうでしたけど、気性が荒いというかワガママなのに、重宝され、使われてきた選手が数多くいました。上のチームに行けば、前線には強烈な個性を持った選手がいます。そういう選手をうまく使うことも大事なのですけど、そういう選手にうまく使ってもらえるような関係を作らないとダメなので」