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大谷翔平「雄叫び逆転12号+162.5キロ」で連敗地獄エンゼルスを救ったけど… 苦手の「対左打者」攻略、2つのヒント〈球種分析〉
text by
間淳Jun Aida
photograph byWally Skalij/Getty Images
posted2022/06/11 06:00
大谷翔平は7回1失点の好投でエンゼルスの連敗を止め、渾身のガッツポーズを見せた
2日のヤンキース戦登板前の時点で、9イニングに換算した場合の平均奪三振数は12.79個。昨シーズンの10.77個を大きく上回る。
一方、9イニングあたりの与四球は3.04個から2.03個に減っている。被出塁率と被長打率を足した被OPSも.637から.616に改善。4月14日のレンジャーズ戦でメジャー初の満塁ホームランを許したことなどもあり、現時点では昨年より防御率は悪いが、ピンチの数自体は減っている。
それぞれの球種の平均球速がアップしている
★表(1)昨季と今季の球種別平均球速と割合(※外部サイトでご覧の方は、各表を関連記事からご覧になれます)
大谷の昨シーズンからの進化に森本氏が挙げるのは「球速」。直球の平均球速は2キロ上がって156キロとなっている。さらに、カットボールは4キロ、スライダーは5キロ、カーブは6キロも速くなっている。
森本氏は「直球が走っているのは今シーズンの特徴で、良い傾向でもあります。変化球も球速が上がって直球との球速差が少なくなっているので、打者が球種を見極めにくくなっていると思います」と分析する。一般的にカーブは球速が上がると変化が小さくなる傾向にあるが、大谷の場合、球速が6キロ上がっても曲がりの大きさはほぼ同じ。直球との球速差も平均で30キロあるため、十分に緩急をつけられる。
大谷の代名詞「スプリット」が減っているワケ
★表(2)大谷の今季の左右打者別球種割合
今シーズンの大谷の投球を解析する上で、見逃せないのが変化球の割合。ここに現時点での課題と、シーズン中盤から終盤にかけてのポイントがある。昨シーズンと比べると、スライダーとカーブの割合が高くなっている。
一方、大谷の代名詞とも言えるスプリットは減っている。そして、対右打者と左打者で選択する球種が大きく変わる。内容を詳しく分析すると、「変わる」というより「変えざるを得ない」状況が見えてくる。
右投手は一般的に右打者よりも左打者に対して相性が悪い。ただ、大谷は対左打者への成績が極端に落ちている。
被打率は右が.157で左は.275、被OPSは右が.463に対して左は.783まで下がるのだ。右打者への数字は昨シーズンより改善している一方、苦手にしている左打者は悪化している。
森本氏は「全結果に対する完全アウト(三振か内野フライ)の割合が右打者は45%と、かなり高い数字になっています。しかし、左打者は33%まで落ちて、四球や本塁打の割合が右打者より上がっています。様々な数字から、運が悪いわけではなく、大谷選手は左打者を苦手にしていると言えます」と語る。
右打者と同じように左打者を打ち取れない大谷の苦労は配球に表れている。