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センバツ山田陽翔“あの賛否の激投”…近江の監督がいま明かす「続投を避けられなかった理由」“登板過多=監督の責任”は本当か? 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byL)Hideaki Ujihara/R)Hideki Sugiyama

posted2022/06/09 11:11

センバツ山田陽翔“あの賛否の激投”…近江の監督がいま明かす「続投を避けられなかった理由」“登板過多=監督の責任”は本当か?<Number Web> photograph by L)Hideaki Ujihara/R)Hideki Sugiyama

今年のセンバツで物議を醸した山田陽翔の激投。その裏側を近江・多賀章仁監督に聞いた

 その中で大会全試合に先発し、準決勝は5回の打席で死球を受けての投球。疑義を呈する意見が出て当然といえるだろう。

“山田なし”で戦った昨秋の近畿大会

 もっとも、多賀は複数投手の起用に否定的ではない。

 過去の甲子園では2001年夏の準優勝をはじめ、複数の投手で勝った経験がある。2018年夏のベスト8の際もエース格の2年生・林優樹(現・西濃運輸)がいたが、下級生ということで無理はさせなかった。

 そんな多賀が、なぜ、今大会は山田の起用にこだわったのだろうか。

「エースと次の投手との力に差の開きが大きかった。山田の力量が群を抜いていたということです」

 多賀は力強くそう語るが、とは言っても、昨秋は山田なしで戦ってきているのだ。

センバツ選考で評価されなかった“山田を登板させない決断”

 指揮官の采配を鈍らせた背景にはセンバツ選考が影響している。

 多賀はこんな話をしている。

「僕は今年春のセンバツ出場を100%疑っていませんでした。選手たちにも大丈夫だからと話していました。でも、選んでもらえなかった。投手力が落選理由になっていたのですが、僕は山田のことがあったから、絶対に評価してくれると思っていたんです。昨年の秋、僕は山田を登板させませんでした。その理由は彼の将来を考えてのことです。そう決断していることを良い意味で受け取って欲しかった。昨年の夏は甲子園を沸かせた。甲子園に出る以上、最善を尽くすということをやってね、山田は昨年の夏あれだけ投げとんやからって」

 補足しておくと、近江は1月28日に発表されたセンバツ出場校からは選外になったが、本来出場予定だった京都国際ナインに新型コロナウイルス感染者が出ての代替出場だった。

 センバツの出場は、夏と違って、前年秋の県大会・近畿大会の戦いぶりから出場校が決まる。近江は近畿大会でベスト8に進出したものの、山田が投げていなかったこともあって、試合の終盤で打ち込まれる試合が多かった。それが落選という最終判断になったのだった。

 力のある山田は投げなかったため「チームの投手力」として含まれない。

 そう判断された。いわば、山田が投げないことには評価されないチームだということだ。

 しかし、センバツの選考とは、ただ実力校を選べばいいというものではない。

 その選出や落選がもたらす副次的な要素も鑑みられなければ、プレーする選手、指揮官に大きな影響を与えることもある。

【次ページ】 夏の甲子園後、すぐに大会…選手はいつ休めるのか?

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