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“ZOZOマリン→ドーム球場”で奪三振が半分に!? ロッテ佐々木朗希の巨人戦「5失点降板」で見えた意外な伸び代とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/06/05 11:04
巨人・岡本和真(右)に今季初ホームランを打たれたロッテ・佐々木朗希
それは球種の少なさだった。
佐々木は真っ直ぐとフォーク以外には今年から投げ出したカーブとたまにスライダーも投げる。ただスライダーについてはそれほど自信がないのか、1試合で投げるのはほんの1、2球程度で持ち球にも入らないレベルでしかない。
ほとんど真っ直ぐとフォークという2球種で相手打者を抑え込んできたが、ただそれだけだとさすがに苦しい。そこで今年からカーブを使い出している。
ただこれまでの佐々木の組み立てでは序盤は真っ直ぐとフォークで押して、中盤以降で目先を変える球種としてカーブを使うことが多く、この日の巨人戦でも5回の岡本の打席で、ようやくカーブを初めて投げた。
フォークが落ちないときの“逃げ場”も作れる
1試合をトータルで考え、その中でカーブという球種にそういう役割を持たせるとなると、やはりどうしてももう1つ、使える球種が必要なのではないだろうか。それがスライダーなのか、それともチェンジアップなのか……。佐々木の場合は160km台のストレートに140km台の高速フォークで緩急差があまりない。だとすれば130km台のスライダーでも有効になるとは思うが、むしろチェンジアップなど前後に揺さぶれる球種が1つ増えるだけで、組み立ては大幅に変わってくるはずでもある。そういう球種が1つ増えれば、フォークが落ちないときの“逃げ場”も作れることになるのではないだろうか。
今年とは言わない。
ただ打たれてみて、苦しい投球をしてみて、将来的にはやはりそこが課題だということが分かった。それもまた、この敗北で得た収穫だったはずである。
基本的にはこれまで真っ直ぐとフォークだけで相手打者をねじ伏せ、完全試合までもやってのけてきた。そこに佐々木の頭抜けた能力とスケールの大きさを感じる。ただ、その一方でどんなに凄い投手でもコンディションが悪かったり、環境の変化から思うようなボールが投げられないときがある。それでもローテーションを守り続けて、勝つことを目指さなければならないのがエースの宿命である。
まだまだ佐々木はスタート台に立ったばかり。成長途上の右腕がどういう過程でこの課題を克服するのか。その姿を観ていくのも、佐々木の登板試合を観戦する楽しみである。
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