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那須川天心vs武尊“衝撃のフジテレビ撤退”が想起させる「PRIDE消滅」の悲劇… いまや「格闘技はPPVで見る時代」なのか?
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySusumu Nagao
posted2022/06/04 06:01
「THE MATCH 2022」の実行委員を務める榊原信行氏は、5月31日の記者会見でフジテレビに「戻ってきてほしい」と訴えかけた
また当時のキックの場合、興行に反社会的勢力が絡み、テレビのプロデューサーが恐喝されるなどのトラブルが起きたことも、放送がなくなった要因のひとつと伝えられている。トラブルを経験したプロデューサーや関係者が昇格して番組編成に関わるようになったとき、格闘技に対してどのような感情を抱くのか。それは言わずもがなであろう。
いまや「格闘技はPPVで見る時代」なのか?
知っての通り、「THE MATCH 2022」はABEMAでライブ配信されることが決定している。地上波での放送はなくとも、スマホやパソコンなどの端末があれば、ABEMAによる有料配信(PPV)で観戦することができる。とはいえ、視聴用の一般チケットは5500円と決して安くはない。
ここ数年、格闘技やボクシングはテレビによる放送よりも、ABEMAを筆頭にネットによる配信を選択する傾向が強くなってきた。K-1やRISEはABEMAでのライブ配信が定着。またボクシング界でも、地上波での放送が当たり前だった日本の有名なボクサー絡みのビッグマッチが、Amazon Prime Videoで配信されるようになった。4月9日のゲンナジー・ゴロフキンvs村田諒太に続き、来る6月7日には井上尚弥vsノニト・ドネアの3団体統一戦がオンエアされる。
識者の中にはすでに「格闘技はPPVの時代が来た」と声高に主張する者もいる。その意見にはある部分で賛同したいが、だからといって地上波の役割が終わったわけではない。テレビのスイッチを入れたら、たまたま格闘技コンテンツに出くわす。その“偶然”こそが、不特定多数が視聴する地上波の最大の魅力であり、新しいファンを開拓する大きな窓口になっていると思えるからだ。
事実、大晦日を軸とするフジテレビ系でのRIZIN中継の効果は想像以上に大きかった。RIZINに出た複数の選手から、試合放送の翌日に「昨日試合をしていた◯◯選手ですよね」と声をかけられ感激した、という話を耳にした。知人や関係者、コアな格闘技ファン以外にも認知され、評価される。選手にとって、これほど名誉なことはない。