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クロップが「世界一という評判に興味がない」と語る理由… 王手をかけたCL制覇も通過点、リバプールで目指すものとは 

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アルトゥル・レナール

アルトゥル・レナールArthur Renard

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posted2022/05/27 17:16

クロップが「世界一という評判に興味がない」と語る理由… 王手をかけたCL制覇も通過点、リバプールで目指すものとは<Number Web> photograph by Getty Images

コーチングスタッフ、信頼する選手、そして未来への展望。決戦を前にクロップがリバプールの強さの秘訣を明かしてくれた

どんな選手でもチームとして機能させることができる

 そうした練習メニューを考え、各セッションをリードするのがラインダースだ。それは、助監督として呼び戻した4年前にクロップが思い描いていた進め方でもある。

「私は特定のやり方しか受け入れられないような頭の固い年寄りではない。だが同時に、あれもこれもと考えを巡らせなくてはならない立場で、エネルギーを完全燃焼させながら、すべてのセッションを仕切れるほど若くもない。歳をとるとはそういうことだよ。チームホテルの部屋で朝起きると、一瞬、自分がどこにいるのか分からないこともある(苦笑)。3日に1度のペースで試合がやって来るようなスケジュールのなかで、すべてを1人で抱え込むような立場は御免こうむりたい。ただ私の場合、その必要がそもそもない。ペップがいてくれるからね」

 とはいえ、永遠に全身全霊を傾け続けずにはいられない対象が1つ。監督として自らが唱導するサッカーだ。リバプールに浸透させたスタイルは、結果にも時流にも左右されることのないものだとクロップは理解している。

「だからこそ、こだわり続ける価値があると思っている。そんな普遍的な戦い方を断じて支持する。一時的な結果はチームの面子にもよるだろうが、チームのフットボール自体はそうではない。極端な言い方をすれば、どんな選手たちでもチームとして機能させることのできる戦い方。それが、我々が志向するスタイルの存在意義であり、至ってクールな魅力でもある。まだまだ改善の余地があることは認めよう。けれど、明確なビジョンの下に信念を持って取り組み続けてきたからこそ、少しずつ着実に進化を遂げることができたし、この2、3年でその成果が確認できるようにもなってきた」

主軸が次々に離脱した昨季は「あり得ない」

 カウンタープレッシングに磨きがかかり、統率の取れたユニットとして完成度を高めるリバプールの歯車は円滑に回る一方だ。

 しかし、歯車が予想外に狂いかけたのが2020-21シーズンである。立て続けに、しかもシーズンの大半でCBのビルヒル・ファンダイク、ジョー・ゴメス、ジョエル・マティプを失うことになった指揮官が昨季を振り返る。

「あり得ないとしか言いようがない。最終ラインの欠員をMFで埋めるしかなかったんだ。ビルドアップは見事だったが(苦笑)、チーム特有の守り方ができなくなってしまった。急造のディフェンスラインを、いつもの高い位置に押し上げるのは無理があった。守備に回った中盤の選手たちも、代わりに中盤の底に入った他のMFたちも不慣れな持ち場にいる状態。正常時と同じように機能させる解決策を見つけることはできなかった。一般的には、引いて守ってカウンターを狙うという方法が得策だっただろう。だが我々のチームでは、それは選手たちから『正気ですか?』と言われそうな戦い方だ」

【次ページ】 ドルトムント最終年よりも「昨季の方が厳しかった」

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