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クロップが「世界一という評判に興味がない」と語る理由… 王手をかけたCL制覇も通過点、リバプールで目指すものとは 

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アルトゥル・レナール

アルトゥル・レナールArthur Renard

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posted2022/05/27 17:16

クロップが「世界一という評判に興味がない」と語る理由… 王手をかけたCL制覇も通過点、リバプールで目指すものとは<Number Web> photograph by Getty Images

コーチングスタッフ、信頼する選手、そして未来への展望。決戦を前にクロップがリバプールの強さの秘訣を明かしてくれた

ドルトムント最終年よりも「昨季の方が厳しかった」

 昨季の苦戦は、前任地での最終年に通じるものがあるかにも思われた。時計の針を巻き戻すと、2014-15シーズンに突如として黒星が続くようになったドルトムントは、途中でブンデスリーガ最下位に落ちたほどだった。

「正直に言えば、昨シーズンの方が厳しかった。リーグ順位ではドルトムント時代の方が酷そうに見えたかもしれないが、当時はウィンターブレイク前の最終戦を終えた時点で『大丈夫だ』と思えた。後半戦には故障者が戻ってくる目処がついていたし、その前には3週間ほどの準備期間があることも分かっていたから。実際、それでチームは救われた。

ブレーメンに1-2で負けて前半戦を終えた日のことは覚えている。順位は17位。家に帰ると、(妻の)ウラが『ふーっ』とため息をつくような顔で、私のことを見ていてね。分かるだろう? 勝てない監督の妻は、決して気分のいいものじゃない。だが私自身は、ウィンターブレイク中のバカンスを楽しみにしているハッピーな夫として帰宅したわけさ。チームは心配ないという確信があったから。その10日後に後半戦に向けたプレシーズンが始まると、実際に戦力が戻ってきた」

「結局、誰も戻って来なかった(苦笑)」

 ところがリバプールでの昨季は、シーズン折り返し次点での順位が4位ながらも希望的観測は持てなかったのだと言う。

「シーズン途中で、ローター・マテウスと対談する気はないかと訊かれたことがあった。60代になった彼は『ビルト』紙にコラムを持っている。私は『ローター・マテウスなら、もちろん! で、インタビューの場所は?』という調子で乗り気だったんだが、実現したのはブダペストで、RBライプツィヒと対戦した際(昨年2月16日のCL)。その席でシーズン終盤の目標を訊かれたので、『ヨーロッパへの切符を手にできればいい』と答えると、『チャンピオンズリーグ出場権?』と聞き返された。私は、『そんなまさか。ヨーロッパリーグでも出場を狙う価値はある』みたいな反応だった。いや、真剣にそう考えていた。欠場中の誰が、いつ復帰できそうかがまったく見えない状態だったからね。それで結局、誰も戻って来なかった(苦笑)」

 相次ぐ主力の欠場は、若手が存在をアピールするチャンスとなる。事実、登用に応えたリース・ウィリアムズとナサニエル・フィリップスの両CBは、順位下降に歯止めをかける一助となった。その一方で、レギュラー陣の中には疲労が蓄積している体に鞭を打たなければならなかった選手もいる。

「ファビーニョは気の毒になるほど試合が続いた。前線のウィンガーたちも同じ。『また先発してもらわないといけないのか? そんな馬鹿な』と思うこともあったよ。それほどの非常事態だったが、最終的には乗り切ることができた」

【次ページ】 バージルとアリがいなければ……

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