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今季3位表彰台が1度のみ…常勝ホンダがMotoGPで低迷を続ける真相とは?「本来のポジションではない」とプーチ監督も落胆 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2022/05/20 17:00

今季3位表彰台が1度のみ…常勝ホンダがMotoGPで低迷を続ける真相とは?「本来のポジションではない」とプーチ監督も落胆<Number Web> photograph by Satoshi Endo

転んでいそうで転んでいないスペインGP決勝のマルケス。曲芸のようなライディングが今季は特に目立つ

 スペインとフランスでは、僕の目の前でマルク・マルケスが転び、もしくは転びそうになった。共通しているのは、マシンを寝かせ始めた直後、まだ膝がつく前にフロントが切れ込んでいること。ハイサイドが多かった現象と、この数戦のあまりにも低い限界での転倒、そして転倒寸前の状況は、セッティングと密接に関係があるのだということは容易に想像がつくが、いずれにしても、どうしてここまで迷走してしまったのだろうかと不思議で仕方がない。

 そうした状況の中でスズキの撤退が決まり、ジョアン・ミルとアレックス・リンスという素晴らしいライダーの行き先にホンダの名前が挙がり、ライダー、ホンダとも実際に交渉していることを認めている。しかし、コンストラクターズポイントで6メーカー中最下位のホンダにとって、現状打破に必要なのは、誰を乗せるかではなく、誰もが乗りたいと思わせるバイクを作ることではないだろうか。

 あのマルケスがこれほど苦戦しているバイクに、果たして誰が乗りたいと思うのだろう。もちろん、マルケスが大けがをしたことがホンダのつまずきの始まりだが、思えばこの10数年、ケーシー・ストーナー、マルケスというチャンピオンの偉業を支えてきたのは、18年までホンダのライダーだったダニ・ペドロサという偉大なるナンバー2のお陰だったような気がする。MotoGPでもっとも小柄なライダーだったペドロサはニューパーツの評価も的確だったと言われ、とにかく乗りやすいバイクを目指した。その頃のホンダはライダーの平均点が高かったし、「いいバイクは乗りやすいバイク」ということを証明する時期だった。

 コロナ禍もあり、日本のメーカーはマシン開発においてヨーロッパ勢に較べるとはるかに厳しい条件下にあるが、一方で日本勢はヨーロッパ勢に較べるとはるかに大会社であり、過去にも常にハンディキャップを跳ね返してきた。過去2年、厳しいコロナ禍の中で日本メーカーのスタッフは、確かに孤軍奮闘しているように見えたが、それも今年はかなり解消されて、言い訳の材料にはならなくなってきた。

“常勝”復活に欠かせないもの

 いつの時代もレースの勝敗をわけるイチバンの要因は、ライダーやスタッフはもちろんのこと、会社全体としての勝ちたいという強い気持ちなのだろうと思う。そして、現在の差のつきにくい厳しいルールの中でMotoGPクラスの勝敗に大きな影響を与えているのは、モチベーションではないだろうか。

 グランプリのパドックに衝撃を与え、レースファンをがっかりさせたスズキのMotoGP撤退という経営判断が、スズキとともにMotoGPを支え、常勝を誇ってきたホンダやヤマハに伝播しないことを願うばかりである。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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