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「これでレースに集中できる」念願のMoto2初勝利を果たした小椋藍が、一気に王座争いの主役へ《来季MotoGP昇格も》
posted2022/05/07 11:01
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
イベリア半島の西南部に位置するヘレスサーキットで行われた第6戦スペインGPで、Moto2クラスに出場する小椋藍が、Moto2クラス初優勝を遂げた。Moto2クラス初PPから好スタートを切って首位に立ち、追撃する二人の選手を後半突き放した。グランプリデビュー4年目、60戦目の勝利だった。
それから4日後の5月5日、次戦フランスGPに向けてバルセロナのカタルーニャサーキットでテストが行われた。彼へのインタビューは、走行を終えた夕方、パドックで始まった。
午前中は快晴だったが、午後になって雨になる。路面が濡れる程度の雨であり、陽が差せばすぐに乾くような状況だったが、乾くかなと思うと再び雨が落ちるという調子で、結局、テストは終了した。この日、インタビューの予定は取っていなかったが、雨のために予定より早く終了したことで、急きょ、彼の話を聞くことが出来た。
初優勝を遂げての変化
最初に聞いたのは、初優勝を達成してからの周りの反応。そして、自身の中でもし変化があったとすれば、どういうものだろう? どう答えてくれるのかまったく予想できなかったが、彼はこう答えてくれた。
「周りの反応は、やっと勝てたねというのが多かったですね。自分でもそう思いますから(笑)。で、初優勝を達成しての変化を一言で言えば“全然集中できる”ですね。毎回、ベストを尽くすというのは同じだし、優勝するためにはどうすればいいのか、というのも変わらない。でも、いままでは、優勝しなきゃという気持ちがどうしても入ってきた。そういう気持ちがすごく走行の邪魔になる。ヘレスで勝てたときに、これでとりあえず一回優勝できたし、これまでよりレースに集中できるな、と思いましたね」
この日のテストはMoto2クラスのライバルたちがほとんど揃っていたが、初優勝を達成したことで周りの変化はないという。それもそうだろう。いつも勝てそうで勝てないというだけで、Moto3クラスでは8回表彰台に立ちチャンピオン争いをした。Moto2クラスでも1年目のシーズンに表彰台に立ち、2年目の今年は3回目の表彰台で初優勝を達成したのだから。「いつも15位とか20位とか走っていて優勝したわけではないので、何も変わらないです」と彼は答えてくれた。