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「会長の棺に土下座したよ」長与千種が涙を流して反発した“遺言の中身”…解散から19年、全日本女子プロレス興業を作った“松永一族”本当の正体
posted2024/09/22 11:05
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph by
L)Shiro Miyake、R)AFLO
全日本女子プロレス興業(全女)からタレント活動を経由して、GAEA JAPANへとつながった長与千種の足跡。全女1強だった昭和の時代は終わりを告げ、平成初期にはGAEAが台頭。やがて元全女、元JWPだったベテランの人気選手たちが相次いでGAEAを主戦場にしたことで、一躍トップ団体に躍りでた。
坂道を転がり落ちた全女と“土下座の終焉”を、GAEAの金看板であった長与は、どんな思いで見つめていたのか。
◆◆◆
長与 (松永高司)会長が亡くなったとき、お通夜に行ったんだ。お通夜って普通、夕方からじゃない? けど、顔を合わすのが申し訳なくって、お昼すぎに行ったのね。
――多くの関係者と顔を合わせたくなかったんですか。
長与 そう。なぜだかわかんないけど、自分がダメな子に思えちゃって。会長の娘さんたちを知ってるから、頼んでお昼すぎに行かせてもらった。そしたら、全女のあのロゴ、王冠があって、会長が棺のなかで眠ってて、土下座したよね。土下座。
――その意味は?
長与 自分が悪かったって思っちゃった。自分が全女にいたって、何も変わってないと思うよ。でも、自分がGAEAを作らなければ、もっと何かしらができたのかなとか。んー……。会長の顔を拝ませてもらって、もう涙で目の前が見えなかった。そのときに、娘さんたちが言ってくれたのね。「お父さんが言ってたんで、長与さん、言っていいですか? いつも長与さんの話をしてて。千種はほんとすげぇんだぞって。横浜アリーナ、またやりてぇなって千種に言っといてくれ」って言われた瞬間に、「うわー、キタ」と思って。そのあとに北斗(晶)と会って、彼女は会長を山に連れていったり、いろんなことをしてくれてたらしいんだけど、彼女と会長の話をしたあとに、碑文谷にある一族が眠っているお墓に行ったの。1人で。
――どんなことを話したんですか。
長与 すっげぇ文句たれた。2時間。兄弟が並んでるんだけど、まず俊国さん、国松さんに、「ふざけんなよ。勝手なんだよ。どうすればよかったの?」ってずっと言ってた。泣きながら。で、ちょっと離れたとこにある会長のところに行って、ドカッて座って、「なんでそういう言葉を残すの? すっげぇ嫌なんだけど。そんなに良くない子なんだけど、自分は」って言った。最終的には、「次会うときは横浜アリーナのときね。それまでは来ねぇよ」って言ってから、もう行ってない。いまも行けないよね。まだまだ自分の力ではやれないから。でも、もう一度手を合わせに行きたいなと思っている、還暦を迎える自分がいます。