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今季3位表彰台が1度のみ…常勝ホンダがMotoGPで低迷を続ける真相とは?「本来のポジションではない」とプーチ監督も落胆
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2022/05/20 17:00
転んでいそうで転んでいないスペインGP決勝のマルケス。曲芸のようなライディングが今季は特に目立つ
そして今年は7戦を終えて、ポル・エスパルガロが開幕戦で3位表彰台に立っただけ。頼みの綱のマルケスも視力障害再発の不安を抱える上、右腕と右肩の状態も完全ではない。
これまでは、マシンの状態が完璧ではなかったとしても、スーパーライディングを見せるマルケスがホンダをチャンピオン争いに押し上げ、実際、13年のデビューから怪我をする前年の19年まで7年間で6度のタイトルを獲得してきた。MotoGPクラスでは、これまで59勝をあげており、この数字は、MotoGPに参戦する他のライダーたちの勝利数を合計しても到底及ばない大記録である。そのマルケスが、怪我の影響だけとは思えない大苦戦を続け、6戦を終えて4位を最高位に表彰台はなし。そして迎えたフランスGPでは、これまで聞いたことがないコメントを連発することになった。
「明日の予選はトップ10を狙う」「決勝はセカンドグループで戦いたい」「決勝は6位から7位くらいの勝負ができればと思っていたし、その通りの結果になったが、でも、それは転倒者が出たからで、実際は9位のレースだった」
これまでどんな状況でも、マルケスは優勝争い、表彰台争いを期待させたものだが、いまは完全に手の届かないところにあることをコメントが裏付けている。
期待のニューマシンがなぜ…
マルケスがこの状態なのだから、そのほかのホンダ勢も推して知るべし。その原因は、ひと言で言えば、車体のバランスの問題なのだろう。2022年型RC213Vは、エンジン、車体ともに大幅に改良されて“期待のニューマシン”となるはずだったが、カタール、インドネシア、アルゼンチン、アメリカと続いたシーズン序盤の中高速サーキットでは、良くも悪くもないという印象にとどまった。ただ、特徴的だったのは、ハイサイドでの転倒が多かったこと。電子制御の時代にハイサイドで転ぶのも珍しいと感じたが、ヨーロッパラウンドに入ってからの3戦は、テクニカルサーキットが続き、マルク・マルケスは「これまでは感じなかったが、タイトなコーナーでは旋回性がイチバンの問題」とコメントするようになった。