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「体罰を容認=83%」12年前に桑田真澄が取ったアンケートの衝撃結果… 秀岳館サッカー部に痛感する“部活と暴力の認識改善”
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySports Graphic Number
posted2022/05/02 17:01
2013年、東大野球部にコーチする桑田真澄さん。早大大学院在籍当時、部活の「体罰」についてのアンケートを取っていた
学校スポーツにおいて「熱心さのあまり」「指導が過熱したために」手や足が出てしまうとなれば、暴力はだめだが「暴力につながりかねない“熱血指導”」は悪くないという論法が成り立ってしまう。
最近、ベテラン指導者からよく聞く言葉がある。
「今の子供は、どんなことでも“どうしてですか?”と聞いてくる。昔なら“あれやっとけ”と言えば済んだのにね」
昔の部活では指導者と選手の上下関係は絶対的で、指導者の言いつけには絶対服従、という。反論はおろか質問することさえできない場合が多く、ときには「口応えするな」と手が飛んだりもした。そういう環境下の選手は兵隊のように従順で、指導者の顔色を窺っていた。
「上の人の言うことに大きな声で返事をしているだけで」
やや極端なエピソードかもしれないが――1つ、印象に残っていることがある。自動車教習所の取材をした際に「一番教えにくいのはどんな人ですか?」と教官に聞くと「高校の野球部だね」という声が即座に返ってきた。
「野球部の子は、助手席に座って教えると“はい、はい”と大きな声で返事をするんだ。よくわかっているんだな、と思って、車を降りてから質問すると、何にもわかっていないんだ。ただ上の人の言うことに大きな声で返事をしているだけで、何も考えていないんだよ」
その一方で、大学でコーチングなどを学んだ指導者も存在する。
彼らは選手に練習法、戦術について「なぜそうする方がいいのか」を説明する。そして最終的には「自分で考えなさい」と選手が主体的に考えて、練習法や戦術を選択するように働きかける。そのプロセスで身につけたものは、選手にとって一生ものになっていくと理解しているからだ。
いまだに選手に暴力・体罰をふるう指導者は、選手に練習法や技術を理解させられない“力量不足”か、「昔ながらの指導法」からアップデートできていない“勉強不足”だと言える。
桑田さんが早大大学院時代に実施したアンケート
「いまどき暴力を容認するアスリートや指導者なんていないだろう」と言うかもしれないが、そうとは言い切れない。
現在、巨人の投手コーチをしている桑田真澄さんは、早稲田大学大学院に在籍していた2010年に論文執筆のために現役プロ野球選手270人を対象に「体罰」に関するアンケートをとっている。