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審判は「野球の必要悪」!? 佐々木朗希への“球審詰め寄り騒動”は結局何が問題なのか《侍ジャパンには“星野監督の失敗”で申し送り事項も》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2022/04/29 11:05
4月24日、オリックス戦1回に安打を許し、連続アウトが「52」で途切れた佐々木朗希。2回には白井審判員に詰め寄られる“騒動”が起きた
野球規則の8.02(a)では「ストライクかボールか、アウトかセーフかという裁定に限らず審判員の判断に基づく裁定は最終的なもの」と絶対的なものと規定されている。だから審判が下した裁定に“誤審”という概念はない。
2006年に行われた第1回ワールド・ベースボール・クラシック2次リーグの米国戦で、同点の8回に西岡剛内野手の三塁タッチアップが早かったと米国側が抗議。これをボブ・デービットソン球審が認めて、勝ち越し点となるはずだった日本の得点が認められなかったことがあった。
後に日本代表メンバーの一人だったイチローさんの取材で、この件に触れ“誤審騒動”という言葉を使うと、即座にイチローさんから「誤審ではないです」と正されたことがあった。これもどんな判断であっても審判の裁定は、最終的で、野球には“誤審”というものはないという考えがあるからだ。
白井球審“擁護派”の論理的根拠とは?
ただ「原則的に」と書いたのは、いまは「リクエスト制度」が導入されて、ビデオ判定でアウトかセーフかの判定やフェアかファウルかの判定は覆ることがある。それでもストライクかボールかの判定は、いまだに「リクエスト制度」の対象外なのである。
だから佐々木がいくら白井球審の判定に不満でも、判定は覆らない。しかも野球規則8.02(a)の原注には「(ストライク、ボールの)宣告に意義を唱えるために本塁に向かってスタートすれば、警告が発せられる」と規定されている。マウンドを降りた佐々木の動きはこれに当たるので、白井球審が佐々木に対してアクションを起こすのは間違いではないというのが擁護派の論理的根拠になっている。
ルールブックと照らし合わせると、白井球審の行動は間違っていないとは言えるのである。
ただ、一方で騒動がこれだけ大きくなった背景には、この場面を見たファンの野球規則の枠では測れない心象的な違和感がある。