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将棋PRESSBACK NUMBER
「藤井殿…に、人間将棋は初めてではないのか?」 棋士が驚き、ファンが喜ぶ“藤井聡太竜王のスター性”を観る将マンガ家が間近で見た
posted2022/04/25 17:02
text by
千田純生JUNSEI CHIDA
photograph by
Junsei Chida
藤井聡太竜王と佐々木大地六段が相まみえた人間将棋。
基本的には将棋のルールで進むのですが――勉強のために第1日もネット配信で観ていました。そこで「全ての武者駒(人間)を最低一度は動かすこと」という暗黙のルールがあることを知りました。たしかに普通の将棋だと香車が動かないってこともあるから、香車役になった人としてみれば切ないもんな……と考えると、なかなかよくできたルールだなと。
そんな風に思いながら見ていると、第1日の対局を務めた上田初美女流四段と竹部さゆり女流四段の“煽り合い”が強烈だったんです。
「お主の将棋は人間将棋に向いておるのか!?」「首を洗って待っておれ!」
その様子を解説の木村一基九段が楽しそうに見守っていたんですが(笑)、普段の対局が静寂の中で行われるのとは対照的に、“言葉のプロレス”で一種のエンターテインメントとして成立させるところに新鮮さを感じたんです。
「佐々木殿と師匠の深浦殿にはよく痛い目に……」
さて、様々なイベントでトーク力を磨いている藤井竜王、そして対局中継での解説を見ていると、会話をとても上手く回す印象がある佐々木六段の応酬はいかに――とはいえ両者ともに初出場で年齢的にも若いし、初々しい感じになるんだろうなあ、と思っていたんです。
でも木村九段に対局の意気込みを聞かれると、藤井竜王は“いつもの初手”である「そうですね」ではなく、こんな風にお話ししていました。
「本日は天童にお招きいただき、大変うれしゅうござる。佐々木殿と師匠の深浦殿には、よく痛い目に遭わされておるので、今日はその借りを返す絶好の機会じゃ! 全軍を躍動させて勝利を目指したい。いざ、尋常に勝負でござる!」
ござるどころか「うれしゅう」「おる」「じゃ」「いざ」を駆使して、心得ておる(笑)。
さらに、一応説明しますと――佐々木六段と師匠・深浦康市九段は藤井竜王からたびたび勝利を奪っており、「藤井キラーの深浦一門」なる見立てもあるほど。それを藤井竜王が自ら触れたってことは、もう公認ってことですよね? さらに「全軍を躍動させ」という表現に《全ての駒を動かしますよ》という宣言も入っているわけで。