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野ボール横丁BACK NUMBER
「普通のヘルメットは1万円ぐらいですが…」高校野球で“フェイスガード”は本当に流行るのか? 大阪桐蔭が誰も使っていなかった事情とは…
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2022/04/22 17:01
今春のセンバツでちらほら見かけるようになった「フェイスガード付きヘルメット」。写真はホームランを放つ浦和学院の高山維月
星 あそこのヘルメットはエスエスケイだからです。他メーカーは完全に遅れを取ってしまいました。花巻東とかアシックスのヘルメットを使っているチームも、誰も使っていませんでした。ミズノかゼットのヘルメットを使っていて、かつ選抜出場が当確だった広陵や浦和学院のようなチームほど積極的に採用している選手が多かった印象があります。両メーカーのヘルメットを使っているチームでも、試用期間が短過ぎて、躊躇したところも多いのではないでしょうか。スパイクは色が変わったからといって機能面に大きな変化はありませんけど、ガード付きヘルメットは、かぶってみて「ん?」って思った選手も少なくないと思います。採用したことで、感覚が狂う可能性もありますから。コロナ感染者が出た京都国際に代わって出場した近江はゼットのヘルメットを使っていましたけど、出場が決まったのは、開幕前日の夜でしたからね。試合は大会2日目でした。さすがに使えないですよね。でも、ゼットはユニフォームとかバッグ類は試合までに間に合わせたみたいです。開幕日が雨天順延となり、試合日が1日延びましたからね。すごいですよね。
――甲子園に出場するチームのユニフォームは、基本的に採寸してから作るわけですよね。ほぼ丸2日で作ったわけですか。そんなことできるのですか。
星 普通はできませんが、やったんでしょうね。高校生にとって甲子園は一生に一度あるかないかの晴れの舞台じゃないですか。みんな新品のユニフォームと用具で乗り込んでくる。その中で、汚れが染み付いたユニフォームやバッグを身につけていたら目立ちますから。メーカーの人たちの何とかしてやろうという親心だったんだと思いますよ。
――フェイスガード付きヘルメットは普通のヘルメットよりも高いのですか。
星 普通のヘルメットは1万円ぐらいですが、フェイスガード付きになると1万5000円くらいします。ゼットのように角度を変えられるタイプの方がよさそうに思えますが、ガードを動かすには、いったんネジを緩め、また締め直すという作業が必要になります。簡単には動かせないので、動かした選手の専用メットのようになってしまう可能性もある。そうするとその分、たくさんヘルメットを買わなければならなくなってしまう。また、ガード付きは、ガードが邪魔だからといって自分で取り外すことはできません。自分で加工すると、やはりSG対象から外されてしまうんです。せっかく1.5倍ものコストをかけて導入しても、使う人が少ないともったいない。なので、甲子園常連校のようなチームならまだしも、普通の公立校のように予算が限られているチームは買うのにも慎重にならざるを得ないと思います。現段階では、どこまで普及するか読めませんね。
<後編へ続く>
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