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ラケット破壊、審判台を殴打…なぜテニス界では「野蛮行為」が一向に減らないのか?〈選手の妻が審判員にビンタ事件まで〉 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2022/04/15 11:06

ラケット破壊、審判台を殴打…なぜテニス界では「野蛮行為」が一向に減らないのか?〈選手の妻が審判員にビンタ事件まで〉<Number Web> photograph by Getty Images

世界ランク3位のアレクサンダー・ズベレフ。2月下旬にアカプルコで行われたメキシコ・オープン・ダブルスの1回戦で敗れたあと、判定への不満と怒りを抑えきれず、暴言を連発しながらラケットで激しく審判台を殴打した

 ほかには80年代後半にアメリカのカレッジテニスの試合で対戦相手を殴る事件があったと聞いたことがあるが、テニスでは対戦相手や審判に直接手を出すということは実に稀だ。タランゴの妻が言うように失格や追放といった罰が効いているのかもしれないが、たとえ殴りかかりたいくらい腹が立っても敵は20メートル以上離れたところにいるし、主審も高いところにいるのでなかなか突発的に手は出ない。フラストレーションはもっぱらラケットが引き受けることになるが、ラケットを叩き折ったり放り投げたり、昔から目にするそんな行為も含めて、今プロの世界でも男子選手の野蛮な行為の多さが問題となり、ATPが本格的に対策を講じようとしている。

テニス界で見られる“男子選手の野蛮な行為”

 発端となったのは、2月下旬にアカプルコで行われたメキシコ・オープンで、世界ランク3位のアレクサンダー・ズベレフがとった暴力行為。ダブルスの1回戦で敗れたあと、判定への不満と怒りを抑えきれず、いわゆるFワードを連発しながらラケットで激しく審判台を殴打。主審が咄嗟に足を引っ込めなければ傷害事件になっていたかもしれず、4万ドル(約500万円)の罰金、獲得賞金3万1570ドル(約400万円)の没収、そして2回戦に勝ち進んでいたシングルスの失格という処分を受けた(その後、さらに2万5000ドル:約310万円 没収が追加された)。

 続いては、長年の問題児であるオーストラリアのニック・キリオス。3月のインディアンウェルズでラファエル・ナダルとの準々決勝に敗れると、ラケットを地面に全力で投げつけ、それがバウンドしてコート後方のボールパーソンを直撃しそうになった。さらに翌週のマイアミでは、躍進中の21歳ジェンソン・ブルックスビーがそれと似たような状況でボールパーソンを危険にさらした。

 案の定キリオスは記者会見で反省する素振りも見せず、「あれはアクシデントだ。ボールボーイのところに飛んでいったのは不運でしかない。当たらなかったのは幸いだった。1万回同じようにラケットを投げたとしても、あんなことは起こらない。ズベレフのやったこととは違う」と開き直った。類いまれな才能の持ち主だけに、ATPも過去には更生プログラムまで試みて反抗期の卒業を期したが、もう27歳になるというのにまったく大人になる気配はない。

 ただ、「ズベレフのやったこととは違う」という言い分は間違っていない。主審を意図的に攻撃したズベレフに対して、キリオスとブルックスビーの場合は、ボールパーソンを恨んだわけでも狙ったわけでもない。違反は違反だが、それは昔から頻繁に見られる光景だ。それが、結果的に誰かの体を傷つけたり苦痛を与えたというケースも、90年代半ばからときどき起こっている。

【次ページ】 なぜか減らない野蛮行為「罰金だけでは甘いのか?」

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