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ラケット破壊、審判台を殴打…なぜテニス界では「野蛮行為」が一向に減らないのか?〈選手の妻が審判員にビンタ事件まで〉
posted2022/04/15 11:06
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
先日、西アフリカのガーナのテニスコートで素人が客席から撮っていた一つの動画が、世界のテニスメディアがこぞって報じるほどのニュースになった。
“世紀の平手打ち”の裏で、テニス界でも……
首都アクラで開催されていたITF(国際テニス連盟)主催のジュニア大会。大会の格としてはもっとも低いグレード5の大会で、第1シードだったフランスの15歳が地元ガーナの16歳に1回戦で敗れると、試合後の握手の際にいきなり相手の頬を平手打ちした。加害少年は2日後にSNSで謝罪し、試合中に一部の観客から口汚い言葉を浴びせられていたことでフラストレーションが溜まっていたと弁明したが、失格処分は免れず、エントリーしていたダブルスには出場できなかった。
確かにひどい振る舞いだったが、国際舞台の底辺で15歳のしでかしたことに関心が集まったのは、その1週間ほど前に起こった<世紀の平手打ち>の騒動のさなかだったからだろう。アカデミー授賞式の壇上でプレゼンターの頬を張り倒した俳優ウィル・スミスの演じた役どころは、ビーナスとセリーナの父リチャード・ウィリアムズ。状況はあまりにも違うのに、短期間に起こったテニスにまつわる2つのビンタ事件が見た人の頭の中でリンクした。
〈テニスとビンタ〉選手の妻が審判に…「タランゴ事件」
これまでテニス界での平手打ちといえば、なんといっても1995年のウィンブルドンで起きた<タランゴ事件>である。
当時世界ランク80位だったアメリカのジェフ・タランゴが観客へ暴言を吐いたり主審を侮辱したりした挙句、自ら試合を放棄したのだが、このあと妻が帰り際の主審の腕をつかんでビンタを見舞ったのだ。タランゴは試合後の記者会見でその主審が普段から特定の選手に有利な判定をしていると告発し、妻も記者たちの前に立ち、「ジェフがやったらテニス界から追放されてしまう。だから私が代わりに、やるべきことをやったのよ」と言い放った。