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かけっこで「ビリ」だった川内優輝はなぜ日本代表になれた? 子どもの才能を潰さないための“早生まれ”への理解
text by
鈴木威/バディスポーツ幼児園理事長Takeshi Suzuki
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/04/15 17:00
2019年世界陸上ドーハ大会男子マラソンに出場した川内勇輝。18年ボストンマラソン初優勝後にプロ転向した
「好きこそものの上手なれ」とは、まさに川内選手のような人のことをいうのだと思います。たとえ、最初は走るのが遅かったとしても、好きであれば夢中で走り続けることができます。
そして、走り続けることで、いつの間にか上達し、才能が開花していく。好きであることが上達のもっとも近道である、そういった意味の言葉です。
しかし、子どもがどんなに夢中になっていても、親がその姿を見逃していては才能を開花させることができません。
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たとえば、サッカークラブから帰ってきた子どもに、「今日の練習はどうだった? 楽しかった?」といった会話をする家庭は多いでしょう。
そのとき、子どもは、「うん、楽しかった!」と答えるかもしれません。それを聞いた親もその言葉を鵜呑みにして、「楽しかったんだ。よかった」と、安心するでしょう。
でも、はたしてそれが真実なのかは、その言葉だけではわかりません。
なぜなら、子どもは親の言葉をそのまま返してしまう傾向があるからです。
いざ練習を見にいくと、楽しいと聞いていたのに、その子は練習に興味を示さず、砂遊びばかりをしていました。その子は練習が楽しいのではなく、練習の間に遊んだ砂遊びが楽しかっただけなのです。
それではクラブの月謝が無駄になります。こういうケースは決して珍しくありません。
逆のケースもあります。
つまらないと言っていたのに、見にいったらすごく楽しそうに練習をしている子もいるのです。見にいかなければ、「つまらないならやめさせよう」と思ったかもしれません。
だから、川内選手のお母さんのように、親は自分の目で見て子どもの姿から判断しなければいけないのです。
「スマホ」よりも「子どもの表情」を
ただ、最近の親は忙しいのか、子どもの姿を見にこない人が増えています。
スポーツクラブで「習う」ではなく、スポーツクラブに「預ける」という感覚になっている親が多く感じられるのは、とても残念でなりません。
子どもが一生懸命頑張っていても、輝く表情をしていても、スマートフォンの画面ばかり見ている親がいます。
そういう親にかぎって、「子どもにどんな才能があるのかわからない」と相談にきますが、見ていないのだからわからないのは当然です。そんな姿勢では、高い月謝を払っても子どもの才能を伸ばすのは難しいでしょう。
子どもの才能以前に、親がしっかりとサポートする覚悟や気持ちがなければ、子どもの才能は埋もれてしまいます。
子育てにおいて、親が楽な道を選べば、それで損をするのは子どもであることを、よく胸に刻んでおいてほしいと思います。